★笑顔を見せて【2】





腕の力を緩めて、再びルーシィの顔を覗いてみる。
すると、彼女の瞳からスーッと雫のようなものが流れたことに気がつき、ナツ達自身が雨に濡れていたことを思い出した。

「おっ、とりあえずタオルを借りて拭いておかねえとな。部屋の中もビショビショじゃねえか、このままじゃルーシィに何されるかわかんねえぞ」
「あいっ!ナツは自分で乾かせるから便利で良いよね〜」
「…まあ、な」

ハッピーはタオルを探して、それを一枚ナツに渡す。

ルーシィをそっと拭いてからベッドへ移動させようと両腕を掴み、身体を持ち上げて担いだ。
その姿を見てハッピーは、何か言いたそうな様子でナツを凝視している。

「ん?どうしたハッピー?」
「…ナツ、一応ルーシィだって夢見る乙女でしょ?それじゃ、かわいそうだよ」

相棒の台詞に疑問符を浮かべつつチラッとルーシィを視界に入れて、考え込んだ。

「おとめかあ?……ん、じゃこうで良いのか?」

ルーシィを一度床に寝かせ、右腕を華奢な背中に回した。両膝の下に左腕を入れて、持ち上げてみる。

「おっし、これでどうだハッピー?……けどよぉ、ルーシィの場合『おろせー!』って言いそうだな…」

俯きながら声のトーンが下がる。

「オイラもそう思うよ、…ナツ」

今にも泣きそうな顔でルーシィを見つめるハッピー。

彼女の表情には変化が見えない。
時折、瞬きはするのだがそれが逆に不自然で、

ただ、抱きしめている時の温もりを感じられることが唯一の救いであった。

ルーシィをベッドへ移動させてから、部屋の中を拭き始める。
ナツ達の働きぶりをルーシィが見たら“雨でも降るかしらね〜”などと、言いそうだ。

大分拭き終わり、ハッピーはルーシィの様子を見ようと横になっている彼女の方へと飛んで行った。

「ナツぅー!!」

部屋中に…、外にも響く声でナツの名を叫んでいる。

「な…、なんだ?ハッピー?」

本日二度目の相棒の叫び声に、さすがのナツも吃ってしまった。

「ルーシィ、…いない」
「は?」
「…ルーシィがいないよぉ、ナツぅ」

ベッドの上をグルグルと飛び回って狼狽えている。

少し目を離した隙に、消えてしまったように――

ルーシィがいない。

「くっそお…消えるわけねえ、捜すぞーハッピー!!」
「あっ、あい!…ナツ、待ってよぉー」





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