長編 | ナノ


9.忍べない



ついに戦に出る時が来た。
私にとって、真田の忍としての初めての戦。


好戦的というわけでもなく、どちらかというと戦なんて面倒だし、ない方がいいと思っている性質だが、久々ということもあり血が騒ぐのを感じた。


幸村様が走らせる馬の斜め後ろに、長とともについて行く。
他の忍たちの大半には、宇都宮の進軍経路を探りに行かせた。


今のところ、順調に事は進んでいて、つい先ほど偵察部隊から届いた情報によると、もうそろそろ宇都宮と鉢合わせても良い頃だ。



「なまえ。久しぶりの戦で身体鈍ってるんじゃないの?俺様の足引っ張るようなことがあったら三日間おやつ没収だかんな。」



「長だって毎日甘味拵えてばっかりで、戦どころか忍として鈍ってるんじゃないんですかー。」



もう最近、長がお母さんに見えるのだ。小言を言いながらもなんだかんだ毎日おやつを用意しておいてくれるお母さんだ。きっと気のせいじゃない。



「……はぁ〜。何かあっても助けてやんない。」



「助けなくて結構。……オカン(小声)」



「ちょ、今オカンて言った!?」



「オカ…佐助ェェエ!なまえにちょっかいばかり掛けるでないぞ!」



「えっいま絶対オカンって言おうとした。っていうか、なんか旦那にそんな注意されるの悔しい。好きな子のことついつい苛めちゃう系男子を諌める大人みたい。」



「なぬっ……!おかあ佐助はなまえのことをすすすす好いておるのか?」



「……。」



「…べべべ、別にそんなんじゃないんだからね!なまえのこと、そういう意味で好きとかじゃ、ないんだからね…!ただ、ちょっといつも心のどこかになまえがいて、顔を合わせるとつい意地悪なこと言いたくなっちゃうだけなんだからね!!」



「長、それ私のこと好きじゃね。」



「破廉恥ィィィィィ!!!」



「だから違うっての!なんか、ほっとけないっていうか……そんくらい。」



「やっぱそれって私のこと好き……」



「破廉恥ィィィィィ!!!」



「ちーがーうー!」



「ってか、これから戦だし、長それ死亡旗じゃね。戦の直前に想いを伝えると、その後だいたい死ぬ。壮絶な最期を遂げる。」



「な、何言ってんだよ。そんなんじゃないってば。」



「佐助ェ、必ずや、無事に帰ろうな……!その気持ち、戦が終わればきっと、お前自身の中でなにか気づくであろう…!絶対に……生きて帰ろうな!!」



「死亡旗深々と突き立てるなし!!!」





ギャーギャー騒いでいると、ふと周りの空気が変わるのを感じた。
前方からかなりの数の人間の気配。


周りの者たちも皆それに気が付いたようだ。



「来たか。」



戦が始まった。














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