長編 | ナノ


戦が始まってからは、敵将めがけて突っ走る幸村様の援護に専念した。
此度お館様とは別行動な為、実質幸村様がこの戦での大将であるというのに、自ら一番槍として飛び出して行った。
長は、お母さん顔負けの表情で「やれやれ……」と言っていた。諌める気ないだろう。この親バカが。



そして、その背を護り道を開いていくうちに、私にも欲が出てきた。
欲が出てきたというか、なんかめんどくさくなった。早く帰りたい。甘味食べたい。



今までであれば、“忍として”の戦い方を守っただろう。
音も無く、相手が気付く間もなく斬るのが忍。
戦で目立つなんて、もっての外。顔が知れてはその後の働きに支障が出る。



ただ……長を見ていてそんなの気にしている自分が馬鹿らしくなってきたのだ。
忍のくせに名前は知れているし、闇を操っているようでも結局は闇もクソもないような派手な立ち回りをするし。
なんかでっかい烏に掴まって飛んでるし。



だったら、手っ取り早く勝つことを考えよう。
自分が一番勝利に貢献できる方法を考えよう。



私は幸村様の後を追いながら、婆娑羅を操ることに集中した。
久しぶりに一気に婆娑羅を使うが、大丈夫だろうか。



ほんの一瞬、私の周りが鋭い冷気に包まれる。真冬の早朝のような、そんな冷たい空気。
幸村様も長も「え?」という顔をしたが、敵兵たちには気づく間も与えない。






次の瞬間辺りには、見渡す限りの地に伏す敵兵。






地面には、無数の氷の刃が突き刺さっている。



立ち止まる主と上司。




「なまえ……また随分と一気に片づけたな……。」







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