がる空
29

翌日。


「よーコムイ、今帰っ…」
「「「お帰りラビ!!」」」
「どわっ!なんさ!?」

コムイが呼んでいると聞き、教団に帰って早々室長室へと向かったラビ。ブックマンと共に扉を開くと、科学班の面々に飛び付かれた。サッと素早く避けたのはブックマンだけで、ラビはまともに受け止め、潰れた。

「ほう、熱烈な歓迎じゃの」

「テメッじじぃ!一人だけぐべっ…!」

手をついて抗議しようとしたラビを、しがみついたジョニーが再び押し潰した。

「ラビぃ!もうお前が最後の頼みの綱なんだよぉ!」

「はぁ!?」

「分かってやってくれ、ラビ。ジョニーは気が弱いから、獄寺に睨まれる度に胃痛が出るんだ…」

目頭を押さえたリーバーに、ラビが「獄寺ァ?」と素頓狂な声をあげる。どういう事だとコムイを窺えば、コムイは困った様に眼鏡のフレームを押し上げた。

「いやぁ…何と言うか、ラビが一番歳が近いから」

「いやだから何の話?」






††


「話を聞き出す…ねぇ」

「素性の知れない人間を、教団に置いておく事は出来ない。例えそれが彼らのような子供であってもね」

「……別に俺は構わねェけど」

頭の後ろで手を組んで歩くその姿は、だらけている様にも見える。しかしラビの頭の中では、恐ろしい勢いで情報が巡っていた。あの集団の中の一人、ランボという子供は、瞬間移動でもしてきたかの様に、突然教団の正門の前に現れたらしい。
と、いうことは、だ。ランボと知り合い…というか寧ろ保護者っぽい他の面々も、似たような方法でこの国に来た可能性がある。そうなれば…

(この聖戦に関わるか、否か…)

コムイを挟んで反対側に居るブックマンとアイコンタクトを取れば、彼は無言で頷いた。運の悪いただの子供達ならそれでいい、放っておく。

だが、何かしらの形で関わるのなら、彼らも『記録』対象だ。例外は無い。





『うわあぁぁぁああん!!』


「?」「何さ?」

「多分ランボ君だと思うけど、何か何時もと泣き方が違う様な…」

目的の扉から聴こえてくる少しくぐもった泣き声。三人で扉の前に立って耳をすませると、どうやら獄寺に怒鳴られているようだ。

『いい加減にしねえと果たすぞ、このアホ牛!』

『おい落ち着けって、獄寺』


「「「………」」」

「……虐待?」

「いや違う、……と思うよ」

完全に否定できないコムイ。こそこそと話す三人の後ろで、足音が響いた。




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