がる空
28

「それで、君達はその綱吉君を…」

「沢田さんとお呼びしろ」

「沢田…さんを探してるんだね…」

コムイは思わずほろりと涙を溢しそうになった。だって獄寺が怖い。



というやり取りをしたのが数日前。今、あの子供達は教団に居る。保護という形で。
コムイは頭を抱えてため息を吐いた。
最近、アクマ達の動きが活発化している。実際彼らがアクマに襲われた以上、今の状態で放り出すのは危険だと判断したのだ。その判断は間違っていなかった筈だ、とコムイは思う。―――あの子供達が"普通"だったら。

「どう思う?リーバー班長」

「どうもこうも……怪しさ満点でしょうが、あいつら」

そう。怪しいのだ、あの少年達は。
名前を聞けば、名乗った。その名前に偽りはないだろう。ランボという子供がイタリア人、獄寺隼人がイタリアの日本のクォーターで、あとは全員日本人だとも聞いた。しかしその後の態度が気になる。あの獄寺という少年が十代目と慕う男――沢田綱吉。その人物を探しているという事以外、頑なに口にしない。

「他はそうでもないんですが……あの獄寺とかいう少年、相当こっちを警戒してますね」

「だよねぇ。あの"十代目"とかいう人の名前を出すのも躊躇ってたみたいだし」

言った後はもう開き直ってたみたいだけど。鋭く此方を睨む銀髪の少年を思い出して、コムイは無言でコーヒーを啜った。
一見爽やかな山本や笹川兄妹なら話も出来そうだが、山本は獄寺が、笹川兄妹はクローム髑髏という少女がガードを固めていて、込み入った質問が出来ない。若干放置気味のランボという子供は、ウザ……幼すぎてまともに話が出来ない。

「せめてリナリーやアレン君が居たらなぁ…」

「そうっすよね」

同年代で人当たりの良い二人なら、あの集団とも打ち解けられたかもしれないのに。二人は昨日から、巻き戻しの街へイノセンス回収の任務に行かせてしまった。
教団に十代の若者は少ない。命を懸けた戦争だ、仕方ない事ではあるのだが、大人ばかりのこの状況で此方を全面的に信用しろというのは、確かに酷かもしれない。
しかし、信用出来ないのは此方も同じ。いつ敵が懐に潜り込むか分からない。この聖戦で、教団側は圧倒的に不利。今日まで仲間だった人間が、明日には敵に回るかもしれない、そんな世界だ。そしてその状況の中、自分達に人類の命運は委ねられている。
教団内に、グレーの人間を置いておくことは出来ないのだ。

「神田君は……却下」

即決。あの獄寺とかいう少年と顔を合わせた瞬間、乱闘が始まる。間違いない。というかそれ以前に本部に居ない。

となれば、


「室長ぉ!ラビとブックマンが任務終わったんで、明日には帰ってくるそうです」

「ラビだ!」

は?と首を傾げるジョニーをスルーして、コムイが目を光らせた。リーバーも「まあそうっスね…」と賛同する。
ラビなら歳も近いし、人当たりも良い。任務中に獄寺と山本を助けたらしいし、少しは警戒を解くかもしれない。

ナイスタイミングだ。
そう呟いて、コムイは無線機を手に取った。




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