傲慢
『スクアーロ…愛してるよ』

「そうかよ」

『スクアーロ……ねえスクアーロ』

「うるせえ…」

『私じゃ…私だけじゃダメなのかな』

「愛されたいなら他の男のところへ行くんだなぁ。お前もそれがわかっててオレの女になったんだろーが」

『そう…だね。ねえスクアーロ』

「なんだ」

『呼んだ…だけ、だよ』

「…」


ごめんなさい。
私は私を幸せにしてあげたい。
だからその為に貴方の元を離れる事を決めました。
今までありがとう
From名前


『これでよし…ごめんね、スクアーロ。私やっぱり私を幸せにしてくれる人のところへ行きたいんだ…。愛してるという気持ちだけじゃ貴方の彼女は務まらないみたい。ごめんね』

眠る愛しい人を背に私は同棲していた彼の部屋を去る。
彼とこの部屋に居るのは私よりもきっと連れ込んだ女の子の方が一緒にいた時間は長かっただろう、本当に同棲だったかどうかも怪しいがここは数年間一応私の帰る場所だった。この部屋で体験した苦しい事はこれからは思い出となって私の心に刻まれる。本当にさよならだよ、スクアーロ。
家の鍵を机に置いて、家を出る。これで最後かと思うと涙がでてくるがそれをなんとか引っ込めて、その場を離れた。駅に向かう途中随分スクアーロのことで迷惑をかけた私にとって最早恩人とも言える人物がそこに立っていた。

「名前…本当にいいのか?」

『うん…彼は私が居なくても大丈夫だもの。私は、わからないけど。でも前を向いて新しい恋をするって決めてるから』

「そっか…なら止めれないな」

『何から何まで今まで迷惑かけっぱなしでごめんね、ディーノ』

「お前に迷惑かけられたことなんかねーよ。元気でな…」

『うん、たまには連絡するよ。それじゃ』

私は中国のとある暗殺部隊にスカウトされ、これからそこで幹部として働くことになった。一応ボンゴレ参加のファミリーの暗殺部隊だけど関係は薄く、私自らが進んで関わろうとしない限りスクアーロに会うことはもう一生ないだろう。
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あれから3年、私はゆっくりとだが着実に前に進み彼氏もできた。ちなみに来年結婚予定だ。まさか自分が誰かと結婚できるとは思わなかったけど、でも彼は傷ついた私に優しく手を差し伸べて癒してくれた。今まで経験がなかった愛される喜びを知った。彼は私の所属している暗殺部隊のボスで容姿は中性的で綺麗に見えるんだけど、見た目に似合わず芯はしっかりしていて、家族を大切にするし基本的にとても優しい人だ。付き合った当初は何かとスクアーロと彼を重ねてしまって、その度に罪悪感を感じていたんだけれど「それは仕方のないことだよ」と優しく包み込んでくれた。
彼のおかげで段々スクアーロを思い出すこともなくなり、最近は言われなきゃ、思い出さないほどだった。辛く苦しいことばかりの恋愛だったけど、それでも好きだったことには変わりない。過去の私にもう大丈夫だという意味を込めて、決別の意味を込めて今日スクアーロにありがとうを言いに来た。ヴァリアーのところに直接いくのはいらぬ誤解を招きそうだから控えて、ディーノにスクアーロへ伝言してもらった。
「お礼が言いたいから、もし来れたら月曜の3時にあの駅で待ってる」と
来るかどうか不安だったけど、私が駅に着いた時見渡すと長く美しい銀髪を靡かせた長身の男が立っていたからすぐに彼だとわかった。

『スクアーロッ!』

「名前…」

正面からみるとその顔は数年たっても相変わらず凄いイケメンで昔に3年前に比べると色気と憂いが付け足されて更に女の子が放って置かないような男になっていた。少し気になるのは貴方の目が凄く悲しくて苦しそうにしていることだった。まるで昔の私の目を見ているみたいだ。

『どうしたの?』

「なにがだぁ?」

『辛くて悲しいことでもあった?』

「……」

『顔、パッと見いつも通りに見えるけど、一応元彼女であなた事ずっと見てきたんだからその程度じゃ誤魔化されないよ。ねぇ、どうしたの?』

「うるせぇ、ほっとけ……」

『そうだね…それを聞くのは今の彼女さんの役目だね…今日は来てくれてありがとう。あのね、スクアーロに伝えたいことがあるの、私スクアーロと付き合ってる時凄く辛かった苦しかった。決して幸せとは呼べるものではなかったと思う。でもね、スクアーロの恋愛で知れたことも多かった、だから今は感謝してる。ありがとう。』

スクアーロにありがとうと言った瞬間。肩の力が抜けたというか、ようやくちゃんと吹っ切れた気がして、ちゃんと過去の私を認めてあげることができた。こんな私の気持ちの整理に付き合わせて申し訳ないなと思ったけど、゛昔あれだけスクアーロに振り回されたんだからこの1回くらい突き合わせても罰は当たらないよね?゛と心の中で思った。私も随分図々しい性格になったものだ。

『それとね、私来年結婚するんだ』

「跳ね馬から聞いてる。お前んところのボスとだろ?」

『うん。』

「………祝ってほしいなら他にあたるんだなぁ…」

『そういうと思ったよ。大丈夫、祝われたいわけじゃないんだ。ただなんとなくスクアーロに言っておこうと思ってね。じゃあばいば「言うんじゃねぇ」

『へ?』

「………」

『………またね、スクアーロ』

「またな……」

スクアーロにまたねと言える日が来るとは思はなかったな。私との恋愛はスクアーロにとっても少なからずプラスに作用したのだろうか。だとしたら嬉しい。お節介かも知れないが、前のように愛しては居なくてもやはり初恋の人というのは特別で、幸せになって欲しいと心底願う。今度こそ心に決めた人と素敵な恋愛をして幸せになってね。
今回は本当にただ直接スクアーロに感謝を述べに来ただけだからこのまま真っ直ぐ中国に帰らなければならない。汽車の時間がそろそろだからホームまで向かわなくては…。

っ…行くなあ゛っ

『へ?なんて?』

丁度電車が通る音で掻き消されて私には何も届かなかった。
なんだか必死そうな顔をしているからきっと大切なことなんだと思う。なのにもう一度聞き返したらなんでもないと言われてしまった。

「…っ…何でもねぇ、幸せになれよ…」

『うん!』

傲慢

(全ては俺の傲慢さ故に招いた事なのだから)


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bkm





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