※このお話ではマーモンは男という事になっています。
『マーモンよかったね!呪いちゃんととけて』
「まあね、僕の念願の望みが叶ったわけだし喜んではいるよ。でもどうせなら呪われる前の姿にしてほしかったね」
ラルミルチは半分しか呪われていなかったから僕たちの様に赤ん坊のままではなく、大人になった。コロネロが言っていた体調不良と僕の感じている体の違和感を考えても姿が子供から大人にゆっくり成長はしていくが自分ん本来の寿命は延びない為、老人になるまで生きるのは不可能。僕たちアルコバレーノは呪解前の見た目になるまで生きれるかどうか怪しいくらいだろう。人間の寿命などいつか分かったものではないが、僕は呪いにより赤ん坊になっていただけで実際は名前よりずっと年上だ。プラス呪いにより生命力も失われている。つまるところ僕の人生の残り時間はそんなにないと考えていい。本当は彼女と普通に年を取って、ずっと一緒に居たかったがそんな願いはかなわないのだ。
「(僕はこの際どうでもいいけど、彼女1人残していくのが心残りだよ…)」
『マーモン?そんなに見つめてどうしたの?』
「なんでもないよ…」
『そうだ、あのね私貴方にお話があるの聞いてくれる?』
「なんだい?改まって…」
彼女はいつもどうでもいいことをペラペラ話す。大半がどうでもいい話なのに、彼女が嬉しそうに話しているとその姿が可愛くてつい一生懸命聞いてしまう。
それなのに今の彼女は笑っているのになんだか悲しそうだった。いつもとは違うその姿に何事かとこっちが狼狽えてしまう。
『コロネロさんから聞いたんだ…マーモン残り時間そんなにないんだね』
「!?アイツっ」
『コロネロさんを怒らないで上げて、彼は私が悲しまないように、後悔しないように教えてくれただけだから。愛する者が短命なのはこれから一緒に居る上で覚悟しておかないと後がつらいよって…マーモンは私が悲しむと思って絶対最後について言わないでしょ?』
「…。」
僕が優しいかどうかは置いといて、彼女の言う通り僕は僕の最後についてコロネロさえ教えなければ彼女にそれを伝えることはなかっただろう。だって恋人に最後を伝えたって彼女が悲しい思いをするだけじゃないか、僕は死ぬ直前まで名前の笑顔を見ていたいんだ。そんなこと教えたくなどなかったのに。
『それ聞いたとき私凄く悲しかったよ。マーモンにそれを秘密にされていたことは勿論、それ以上に私たちの一緒に居れる時間はそう長くはないという事実が…でもね、だから私決意することができたんだよ』
「その決意ってなんだい?」
『マーモンに最後の時が来たら、私もその時を最後の時にする』
「何を…言っているんだい?そんな事僕が許さないよ!」
僕のせいで彼女の寿命が縮まるなんて嫌だ。だって彼女は若い、それに対し僕は寿命で死ぬんだ。いわば自然の摂理なのに…。それに彼女を巻き込むなんてしたくない。
『私はマーモンの居ない世界なんて耐えられないよ…その後の未来が50年以上も続くなんて考えるだけでいや!それならマーモンの時間に合わせて私も旅立つ』
「わかってるの?後10年あるかないか程度なんだよ?」
『それでいいよ』
「他に好きな人ができるかもしれないんだよ」
『そんな人絶対に現れない、だからね私の人生のすべての時間をあげるから…マーモンの残り時間も頂戴』
馬鹿だ…彼女は馬鹿だ。どう考えても僕なんかと心中するより、残りの人生の方が価値があるのに…。
それでもそんなことを言われて喜んでいる僕は頭がおかしいのかもしれない。
強欲
(強欲だ、僕も彼女も)