「うっわ、どうしたんだよ高倉…」
弓道場に着いた時に言われた第一声がコレ。言った本人である犬飼くんはかなり、かな〜り(ここ重要ね)引いた顔をしていた。いわゆるドン引きってやつです、ええ。
とうの私はと言えば、そんな言葉を言われてもおかしくない格好をしていた。
ボサボサでビッショリの髪
無数の傷がついている頬
水に濡れ、泥もところどころについている制服
穴が開いている鞄
………その他etc。
「わ、結衣ちゃん!またなの…!?」
「…う、うわぁあああん!!月子ちゃああああん」
流石にこんな汚い状態で綺麗すぎる彼女に抱き着いたり手を握ったりしちゃいけないから、取り敢えず弓道場の玄関に立ったまま。
「今回は何があったの…!?」
「えっとですね…。まず、緑化委員が花壇の花に水やりをしててホースをかけられて、それでビショビショのまま歩いてたら今度は優雅に歩いてた猫にいきなり攻撃されて、思わずよろけたら制服が泥まみれになって…。そんでもって混乱したまま鞄を見たら何故か穴が開いていて、フニィッシュ…!!」
「フニィッシュじゃないでしょ!?」
「今日も高倉の不幸は絶好調だな」
「それを言うな犬飼くんよ…」
何だ何だと集まってくる弓道部員達に説明をすれば犬飼くんみたいな顔をされる。いやまあ、いいんだ。何せいつものことだからね…。
月子ちゃんに言われて取り敢えず濡れタオルで顔や腕などを拭いていく。
そんな時、がらりと扉が開いて人が入ってきた。
「よろしくお願いします……って、高倉先輩またですか」
「梓くん…またとか言わないで…」
「実際またじゃないですか。相変わらずですね、先輩の不幸体質は」
……そう。
私は不幸体質。
ちっちゃい頃からだから慣れてるって言いたいけれど、取り敢えず今のところは慣れてない。最低1日は30個以上の不幸に直面するのだ。
こんな体質だからか、いつからか白銀先輩が言い始めた「アンラッキーガールちゃん」みたいな言葉が学園でも言われるようになって…。そんなわけで今日も私は絶賛、アンラッキーガールをやってるのです。
「わぁああああとまれぇええええ」
「ん……?」
何処からか白鳥くんの声が……なんて思った矢先、私の視界は真っ黒に。
「きゃあっ結衣ちゃん!?」
「高倉先輩!?」
おお、月子ちゃんと梓くんが驚いてる。てか何だコレ。何か張り付いて――……
「あぁああああ!あんたさっきの猫、」
「ニャニャニャニ〜〜♪」
がりがりがりがり!
「ニャフッ」
すたすたと帰って行く猫。傷だらけの私。呆然とする部員達。
「あのさ!今こっちに猫が来なかったか……って、みんな…?」
「白鳥くん……」
「は、はい…?」
「私……
不幸体質辞めたいです…」
(うわぁあああん!!)
(結衣ちゃんしっかり…!!)
(本当に不幸なんですね…)
(いやー、面白いモン見れたな!)
(犬飼ハゲろ!!)
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