【2021年 9月18日】


 やはり、確かに兵部の視力(というか超能力?)は落ちていっているらしい。それこそ、ズンズンと加速度を増して。

 今日なんて、僕を探したりお気に入りの鉛筆を取ろうとしてずっと「みなもと、みなもと」と、ウロウロと探しまわっていた。僕も鉛筆も、目の前にあったと言うのに。
 おかげで、前以上に彼から目を離せなくなった。歩きまわるくせに周りが見えていないからか、ちょっとした段差にすぐ躓くし壁にぶつかりそうになるしで気が気じゃない。

 そうだ、特に風呂が大変になった。すぐに溺れそうになる。前は溺れる、となったら急いで僕の腕を握って難を逃れていたのに、今はその腕の所在を求めて手をバタつかせながらそのまま沈んでいく。人って溺れるときは案外静かだから、怖い。気づいたら浴槽の下の方に居たりするから、本当に怖い。

 あれ、どうして僕は彼の死がこんなに怖いのだろう。





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