【2021年 5月11日】


 そう、昨日の時点では考えていた僕だったが、甘かった。現実はそう、甘くなかった。

 僕は馬鹿か。京介の保護者をやった時のことをどうして忘れていたのか。あんなに苦労したというのに。本体ならもっと大変だと、すぐに分かる物だろうに。馬鹿か。馬鹿だな。
 今回は、頭こそおかしいが、本物の兵部京介だ。色々あって彼との軋轢もそれなりに埋まっていたと考えていたのだが、案外そうでも無かったらしい。

 僕とのことを忘れてふわふわと振る舞う兵部は、なかなかにつらい物があった。まず、僕のことを隊長、と呼ぶのだ。
 少し前までの常だった、棘のある「皆本」ではなく、最後にあったときのように泣きそうに弱々しい「みなもとくん」でもなく。「たいちょう」「たいちょう」「たいちょう」

 ……うるさくてたまらない。苦しくてたまらない。誰だよ隊長って。あの、管理官の遺書に出てきた丸メガネか。あれと間違えているのか。バカにしているのか。ふざけているのか。

 そのことがあんまりにも頭に来て、ついつい奴の口から「た」という音がこぼれる度に頬を叩いてやっていたら、一言も喋らなくなった。静かでいいが、その役職名しか言うことが無かったのかと思うと、ああ、やっぱり腹が立つ。

 まあ、彼の真っ白にやわらかいほっぺたも、いまは真っ赤だしいいか。鬱憤は晴れた。さーて、そろそろおしめ代える時間だなー。





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