*ちょっと下品。



【甘すぎる毒】


「……あ、おはよう」

 朝(?)目が覚めると、僕の体の上に跨がった坊ちゃんと目があった。

「……何をしているんだ?」

 僕は何故かほぼ裸で、一瞬ヤバい想像をしてしまったがそういう事ではないらしい。まず痛くも気持ちよくも何ともないし。

「あれ、見てわからないかな?」

 坊ちゃんはペンを片手に首を傾げた。いい加減重いから退いて欲しいのだが。

「わからねーよ……あ、わかった」

 その持ち物と自分の体をちらりと見やって、やっと気がついた。奴め、僕の体に何か書いてやがる。

「そう、そういうわけだからよろしくね」
「あ、待て、何を書いているんだ?」

 まだ書き進めようとする坊ちゃんを静止し、上半身を軽く起こす。ギリアムは少しよろけた。筋肉無いな、コイツ。

「ん、施術用の目安線」
「そっかー、そっかー」

 まあ、こういう事だろうとは分かっていた。なんせ、僕と奴の付き合いも残念ながらそれなりに長い。こんなの日常茶飯事だ。

「あ、殺しはしないよ、君は貴重な研究材料だから」

 後、貴重な話し相手、だろう?

「では具体的に何を?」

 まあ、グチャグチャに解剖された挙げ句捨てられるというわけではなさそうでよかった。それでも、あまり良いことではなさそうなのは確かだ。皮や肉を削ぎ落とされることはそれなりにあるが、こんな線引いたりはしなかったし。取りあえずどう逃れようかね。

「腎臓とかね、片っぽさえあれば良い物を回収しようかと」

 これなら君も困らない。そう話すギリアムを見て、ふといつの日か僕の腕足を切り落とそうとしていた彼のことを思い出した。

「なるほど、確かにそれなら問題はないな」

 少なくとも表面上は。歩けなくなるわけでもなし、撫でられなくなるでもなし。この子供のやっとこさ考え出した妥協案なのかもしれない。

「だろう?」
「おう」

 さて、どうしよう。論破されてしまった。

「そういうわけで大人しくしててよ」
「うーん……なら、せめて麻酔をかけてくれよ」

 まあ、今回ばかりは仕方ないか。奴なりの精一杯なのだろうから。流石に目玉がどうこう言われたら抵抗するが。

「仕方ないな」
「どうも」

 ぼくはそろそろ、頑張っている子供をすぐ応援したくなる癖を直した方がいい。





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