【スイカ頭】


「ねえ、スイカ割りしようよ」

 この坊やはいつもながらにも唐突だ。

「何故にどうして」
「夏終わるらしいしせっかくだから」

 嘘付け、さっき妹からのメール読んでギリッとしてたの見たぞ。

「なるほど、でも肝心のスイカがないじゃないか」

 まあ理由は何でもいいか。僕も久しぶりにスイカ食べたいし、運が良ければスイカ殴る棒切れを使ってこのワカメをぶっ飛ばせるかもしれない。

「うん、だから代わりに君の頭を使おうかと」
「うん、スイカ割りはやめてかき氷作ろうか」

 早々にその計画は潰えた。仕方がないので夏らしくそれっぽい代替え案を挙げる。

「何それ」

 あ、それは知らないのか。

「いいから氷と綺麗な鋸かヤスリでも持って来な」

 氷削るついでに武器になりそうな物を選択する。後で隠し持てれば上々。どうせこの坊ちゃんには氷を削るなんていう力仕事は出来ないだろうから、可能性は無くはない。

「わかった」


 ――――そう、素直に僕の言った物を取りに行く坊やを見てしめしめ、なーんて考えていたのだが。まあ、そんなにうまくいくはずも無く。


「……どう? もうちょっと?」

 ギリアムの澄んだ返答から10分後。奴が持ってきたのはただの紙ヤスリだったわけで。僕は只今、彼がせっせこ氷を磨いている図を眺めながら皿を構えている。

「あー、もうちょっともうちょっと」

 流石に紙ヤスリごときでは何も出来ないなあ。しかもそんな物すら僕の手には無いし。あーあ、今の僕の目、きっといつも以上に死んでいるな、これ。あっはっはっは…… 夏なんて……! 夏なんて……!!






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