【洞穴に二人。】


「組織を作ろうと思うんだ」
「へえ」

 ここは家。割れた洋灯の光で橙に染まる夕焼け色の部屋。

「超常能力者達を集めてね、普通人を滅ぼすんだ」
「そうなの、いいわね」

 部屋と言うよりは洞穴か。むき出しの土塊に舞う光の粉。

「勿論、君以外だよ」
「知ってるわ」

 彼は偶にわかりきった事を言う。それは何かを確認するかのように。確認してもしなくとも結果は何も変わらず、私はいつまでも貴方の傍に在る。

「名前さ、何か良い物あるかな」
「そうねえ」

 名前。この人に見合う名とは何か。

「こういうのはあまり得意でなくてね」
「……パンドラ」
「ん?」

 パンドラ。蕾見家の蔵書にあった聖書の中に生きる乙女。希望だけを胸底に閉じ込めて絶望を振りまく少女の名。

「貴方にぴったりじゃないかしら」
「へえ、君も皮肉な事を言う」
「ふふ」

 そうよ、パンドラは意図してその箱を開けたのよ。貴方も意図せず撃たれて意図して開戦の幕を上げる。

「パンドラ、パンドラ……うん、いいね、それにしよう」

 貴方ほど皮肉な存在もありゃしないわね。





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