【みい】


 それから僕は、すぐに数名のエスパーを集めて、試験号に言語を会得させようとしていた。

「……おかしいな」

 しかし、ここでも問題が発生。長いこと首を傾げざるを得ない事態となった。

「あー……? う?」

 何度も様々な超能力で教えこんでいると言うのに、試験号は言葉を認識しなかった。
 いや、全く覚えられぬ訳ではなかったか。ただ、ひたすらに時間がかかり、そしてある段階で言語機能の成長が完全にストップするとの結果を観測出来た。大体幼児程度位の物か。勿論だが、身体年齢には到底及ばない。テストにバグは付き物とは言え、中々に前途多難である。

「ギリアム様……」

 不安そうに傍に置いていた道具の一つが声を上げた。最後まで残しておいた、今この屋敷で一番使えるヒュプノ持ちだ。あの愚かしくも憎らしく愛らしい、才に恵まれた妹には到底及ばないものの、この様な方法で言語を覚えさせる程度の事は可能な筈なのだが。

「もういい、下がれ」
「はっ」

 他のサイコメトラー、テレパス、その他諸々は早々に持ち場へ帰していた。役に立たないならば居るだけ無駄だ。そして、今はこの彼も。
 彼らには仕事が多い。その能力を活用して、父の役に立っているのだ。有用な道具は、適切な場所でしかと活用されるべきだ。こんな所で子守りなんぞを任されている自分とは、違って。

「……もしかして」

 そして一つ気づく。なるほど、これは改良点その4、か。

「前頭前野が退化している……?」
「う?」

 そうだ。培養器の中では運動どころか言語を用いる事すらしない。となれば、大脳の言語を司る部分は全くと言っていいほど活動をしていないわけで。すると、言語中枢は自然と使われる事無く機能を鈍らせていく。

「なるほど、これは面倒だな……」

 勿論これは今後の改良次第ではどうとでもなる。培養器内のクローンたちにはテレパスにでも定期的に語りかけさせさえすればいいだろう。

「問題は、お前だよ」

 どうやら僕は、このテストタイプとは意思疎通もままならぬままに過ごしていかねばならないようだ。

「ぎーあう、さーま?」

 これは本当に、前途多難だ。





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