第一部 [6/32]


トントンと足音を立てながらかんろは十二番隊への道を歩いていた。
稽古場で流した汗が気持ち悪かったので風呂場に寄った身としては、風が少し冷たく感じる。
早く建物内に入ってしまいたいと、かんろはさらに歩く足を速めた。



かんろが十二番隊へ行くのは、斬魄刀と自分自身を検査してもらうためだ。

いつも通り十二番隊の戸を勝手に開けながら入っていく。
隊長さんはいなきゃいいな、なんて思ってしまうのは、いつもいつもいらない実験をしようとするから。



「お、きたか」
部屋の奥の方には阿近がいて、今日の検査の準備をしていた。
この検査はかんろが死神になってからずっと行われている。


「今日も相変わらず成長してないな、もう永遠にガキじゃねえか」
『そうですね』

阿近の言うとおり、かんろはある時期から成長をしていない。
身長もそのせいだが、髪の毛が伸びるのも、筋肉がつくのも、時間がかんろの周りだけ止まったかのように変化することがなかった。
そのため、念のため、ということで毎月1回こうして十二番隊で検査が行われていた。



かちゃかちゃと慣れた手つきで阿近がかんろに器具をつけていく。
そばにはかんろの斬魄刀が同じように器具を付けられていた。

『鍛錬で戦う力はついてるからいい。この体だって筋肉が付かないのは悔しいけどもう諦めもついてきた』
用意されているベッドに横になりながら、チューブを通る自分の血や波形が変化する機械の画面をつまらなそうに眺めながら淡々と答えるのは、本当にそう思っているからだろう。



「そんな君には私からプレゼントをあげようじゃないカ」
薄暗い部屋の隅から、その闇をまとってきたのかと思うほどはっきりとした白と黒の顔。
そういえばこの奥は涅隊長の実験室だったかな、と思いながら伸びてきた手を見れば、そこには注射器があった。

『…。』
自分の腕に差してくるかと思い、身体にぐっと力が入る。
だがその注射器の先には針が付いていない。

すーと目の前を通る白い手は、かんろから伸びる点滴用の管を掴んでいた。
カチリと管についていた結合部分に注射器を取り付けてピストンをゆっくり押していく。
チラリと顔を見れば、注射器から点滴の管に入っていく液体を見ながら楽しそうに笑う口が見えた。



検査対象が実験対象になったのか、なんて頭の中で思う。
本人が自分の身体についてほとんど諦めているなら、検査している涅隊長なんかとっくに飽きていたんだな、なんて他人事のように思いながら、眠くなる頭に抵抗せずゆっくりと目を閉じた。

少しだけ、自分の体に違和感を感じながら。




− 6 −

prevnext

bookmark

back



▲top


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -