第一部 [3/32]


弓親に書類を任せ、昼食を済ませたかんろは、昼飯後のおやつにと用意していたおにぎりを頬張りながらこのあとのことを考えていた。


(書類は弓親さんのおかげで今日の分は片付いた。
隊の人たちはきっとお昼を食べ終わった頃だし、弓親さんにもう一度お礼を言ってから、久しぶりに一角さんに稽古を付けてもらおう。)



すたすたと隊舎内の廊下を歩きながら、最後の一口を口に詰め込み、かんろは稽古場の扉を開けた。


『弓親さんいますかー?』
戸口から少しだけ顔を出して声をかけてみれば、弓親はいつものごとく壁に寄りかかって一角と恋次の稽古を眺めていた。
「今日の事務は終わったのかい?」
表情を変えずにこっちに足を運ぶ弓親に、ハイと言いながらもう一度お礼を言ってお辞儀をした。



「かんろー!来たならこっちで相手しろよ!」
ふと声のする方に顔を向ければ、少し汗の流れる顔を死覇装の袖で拭いながら木刀を振り回す恋次の姿が見えた。
いいよー、と弓親から木刀を受け取れば、久しぶりの木刀の感触を確かめる。
久しぶりにストレス発散できる事に気持ちが高ぶったのか、かんろはほんの少しだけ口角を上げていた。



*****


稽古場の空気が少し冷たくなる。

だがこの空気を嫌う者はいない。
十一番隊は皆戦うことが好きだから自然とこの空気に期待してしまう。


トッ、と軽い足跡が聞こえたかと思えば、一角が弓親の隣に来ていた。
楽しげな顔をしながら二人の勝負を見ている。


木刀のぶつかる音が周りの隊士たちに届くより先に、かんろは恋次の懐へと入り込んでいた。
キラリと光るかんろの瞳からはいつもの気だるさが消えていて、戦う時の一角やこの隊の隊長の瞳にとても良くよく似ている。

入り込んだ懐の中で、自身の身体の小ささを活かしてくるりと回転するかんろは、その勢いを殺すことなく手にした木刀を振るった。

しかし相手をしている恋次は六席。

かんろよりふたつも上の席官ならば、ほかの隊士たちのように驚くことはない。
しっかりとその一撃を受け止め、さらに反撃までする。

恋次の木刀が当たったところは、かんろの利き手とは逆の腕。
少しだけ重く入ったその一撃は、恋次本人にしっかりと手応えを感じさせた。

思わずよしっ、と口から出てしまった恋次だったが、対してかんろは一瞬眉をひそめただけで、すぐにその表情を消した。
木刀の当たった腕を特に庇う様子を見せないということは、手応えの割に強く入ってないのかと不思議に思いながら、今度こそは、と恋次は力強く木刀を握った。






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