第一部 [25/32]


『十一番隊八席、かんろです。日番谷隊長はいらっしゃいますか?』
「どうぞどうぞー、はいっちゃいなさーい!」

十番隊に書類を届けに来たかんろの耳に届いたのは、日番谷隊長ではなく、副隊長の乱菊の声だった。
不思議に思いながら扉を開ければ、部屋の中にいるは乱菊だけで、日番谷隊長は今他の隊に出かけていると教えてくれた。



『自分ここ来ると隊長さんとタイミング合わないですね』
乱菊が出してくれたお茶をずずっとすすりながら、かんろはため息をついた。


「失礼します」
突然、名乗ることなくガラっと戸を開けたのは檜佐木修兵だった。
「修兵じゃない、どうしたの?」
「こんにちは、乱菊さん。ちょっとそこのかんろ貸してくれますか?」
『…自分ですか?』

すたすたと歩いてきたと思えば、どかっとかんろのいるソファに座る修兵。
その衝撃で少しバウンドしたかんろをちらりと見ながら、修兵は机の上に書類を置いた。

「ちょっとコレ見てくれねえか?」
広げられたその書類を興味津々で見る乱菊と、興味なさそうに見るかんろ。
そこに赤い文字ででかでかと書かれているのは“特集”の二文字。
そのあとには、“人気急上昇!十一番隊の魅力とは!?”と大きく書かれていた。

『人気ってなんですか…』
怪訝そうな表情をしながら修兵を見るかんろに、乱菊が書類の下から覗いていたもう一枚の紙を手にとった。


「これよこれ!死神人気投票よ!」
ズイっと目の前に出された紙には、確かに“死神人気投票”の文字がある。
乱菊が指をさす投票結果を見てかんろは驚いた。
自分の名前が上から13番目にあったからだ。

「これ、今年2回目の結果よね?1回目の時にかんろは何位だったの?」
「それまだ中間の結果なんですけどね。前回30位以内にいなかったんすよ!」
いきなりこの順位はすごくないですか、となぜか修兵が自慢げに話す。


『それでこの特集ですか?』
自分に魅力なんてないですよ、と言うかんろの言葉は届いていないらしく、修兵は本当に楽しそうにおう!、と返事をした。
「お前の日常とか好みとか取材するだけだから気楽にしていいぞ!」

『でも少しめんどくさいですね…』
ぼそっと呟くように言うかんろに、修兵はにやりと笑みをこぼした。

「そう来るだろうことは阿散井から聞いていたぜ!なら取材が終わるまで、お前の飯代は俺が持つ。これでどうだ!」
ビシっと親指を立てる修兵と、その言葉に一瞬目を輝かせたかんろ。


『…取材が終わるまで、朝から晩までご飯代持ってくれるんですか?』
「おう!阿散井が、かんろは食費の心配をしているって言ってたからな!これでも副官、金はある!」
『その条件乗ります!』

二人を見ていた乱菊は、修兵がかんろの大食らいのことを知らないのかとニヤついていた。



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