第一部 [19/32]


目を開けると、僕はベッドの上に寝ていて、すぐに倒れた時のことを思い出した。
乱菊さんとのやり取りでかんろくんがめくった死覇装。
そこから見えた傷あとと、チラリと見えた彼女の胸。
酒の席での出来事をはっきりと思い出してしまい、自分の頬がじんわりと赤くなるのがはっきりとわかる。

体を起こそうとすると、着ている布団が引っ張られるような違和感。
見ると、ベッドの横の椅子に座りながら、ベッドの上に頭を乗せて寝ているかんろくんがいた。



かんろくんがいた事に驚きもしたが、でもそばにいてくれたことに自身の胸が熱くなるような気がした。
昨日はちゃんと見れなかった寝顔は、子供みたいで本当に気持ちよさそうにしている。

そういえば、今のこの姿は十二番隊の薬のせいだ、って言っていたな。
本来はもう少し幼いと聞いている。

彼女の本来の姿はどんな感じなのか、あの十一番隊でどんな風に過ごしているのだろうか。
「いいな…」

ぼそりと呟いてしまった言葉は小さな声だったのに、部屋の中に響くように大きく感じた。



*****



パチリ。

いつの間にか寝てしまっていたかんろが目を覚ますと、ベッドの上のイヅルと目があった。

『…おはよう、ございます』
かんろの言葉におはよう、と返したイヅルは、苦笑いをしながら部屋の入口を指さした。

「迎えが来たよ」
『?』
小首をかしげながら指差す方を見ると、そこには腕を組み、眉間にしわを寄せながら、かんろを睨む一角の姿があった。



「てめえ、朝からどっかいったと思ったら、仕事サボってこんなところでおねんねとはいい度胸じゃねえか」
今にも頭の血管がブチギレそうな一角に対して、かんろは何も気にしていない様子。



『すいません、今戻りますよー』
稽古ばっかで仕事していないのは一角さんも同じじゃないですか。
戸口の一角とすれ違いざまに舌を出して一言言えばブチっと何かが切れる音がする。


後ろから一角の怒鳴り声が聞こえるが、気にせずかんろは隊舎へ駆けていった。




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