第一部 [17/32]


かんろは、乱菊のいるであろう十番隊の隊舎前にいた。
近くにいた隊士に乱菊のところへ通して欲しいといえば、すぐに隊首室へと案内をしてくれた。

隊首室への廊下まで聞こえる笑い声は乱菊のもので間違いない。
だんだんと近づいてくるその笑い声の他にもうひとり、誰かが話している声が聞こえてきた。
誰か来ているのかと思っていると、ぱっ、と隊首室の扉が大きく開く。


「かんろじゃない!丁度いいところに来たわね、ほらほら入りなさい」
現れたのはもちろん乱菊。
いつもの楽しそうな笑顔を見せながら、手招きしている。
誰か他にも人がいるだろうに、丁度いいとはどういうことか疑問に思いながら、かんろはゆっくりと隊首室へと入った。



『失礼します』
「かんろくん!?」
隊首室にいるのは乱菊とイヅルだけで、十番隊隊長の日番谷冬獅郎の姿はなかった。

「今隊長が出かけていて、ちょうど吉良が来たから休憩してたのよー」

ところで、と乱菊は備え付けのソファに座りながら話を続ける。
「かんろってば何か用でもあるの?」

『ちょっと乱菊さんに昨日のことで聞きたいことがあったんです』
なんて言えば、乱菊は目を輝かせながらかんろを自分の隣に座らせた。
向かいの席に座るイヅルはどこか緊張しているような表情で事の成り行きを見ている。



『弓親さんが、自分が昨日いろいろ失態を犯したって言ってるんです。でも自分は記憶になくて…』
自分の知らないことを一方的に言われるのが嫌だ、とでも言いたげな、悔しそうなかんろの顔を見ながら、乱菊はとても楽しそうな表情をしている。


「昨日のことねー。吉良、あんたから教えてあげたら?」
いたずらっぽく乱菊が言えば、イヅルは顔をさらに赤らめた。
「あんた昨日ね、吉良のこと押し倒したのよー!」
言葉と共に乱菊は、ガバッと、自分の隣に座るかんろに覆いかぶさった。
「乱菊さん!」

目の前の二人が昨日の事と重なり、イヅルは顔を赤らめながら、かんろを助けようと立ち上がる。
乱菊はついね、と言いながら起き上がろうとした。

「あら?」
これどうしたの、と乱菊はかんろの胸元を指差す。
乱れた襟巻きの間から見えるのは、一角との稽古でついた傷。
四番隊の花太郎に治療してもらったが、少しの間傷跡が残るだろう、と言われていたのだ。

『これは稽古の時についたのですね。傷跡はすぐ消えるから大丈夫です』
ひらりと、死覇装の襟元と襟巻きを返してはっきりと傷跡を見せるようにしながらかんろが言った。




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