第一部 [14/32]


「ほらー、かんろ、どんどん飲みなさい!このあたしが注いであげるわよー」

酒を飲んで気持ちよくなったのか、顔の赤くなっている乱菊は、まだ飲みきっていないかんろのお猪口に酒を注いでいく。
『乱菊さん溢れますよー。あ、あー濡れたー』
乱菊の前で溢れる酒を見ながらケタケタと笑うのはかんろ。
お猪口から溢れた酒が流れるのを楽しそうに見ている。



居酒屋の座敷には、すでに乱菊によって飲みに誘われていた檜佐木修兵と吉良イヅルが先にいて、乱菊たちが到着するとすぐさま宴会のような飲み会が開催された。

かんろは、先に来ていた修平たちに自己紹介したり、みんなのお猪口に酒を注いだりと、出来るだけ酒を飲まないようにとしていたのだが、乱菊に飲んでいないことを気づかれてしまい、それからはガンガン飲まされてしまった。



「おいおい、かんろのやつ大丈夫か?」
「阿散井くん、彼女はいつもこうなのかい?」
かんろのお猪口から溢れている酒をおしぼりで拭くイヅルと、彼の隣に座る修兵は、自分たちの向かいに座っている恋次に問いかける。

しかし恋次も、酒を飲んで顔に赤みがさした様子で珍しく笑っているかんろを見て、修兵たちと同じように驚いたような顔をしていた。
「いやわかんねぇ、あいついつも酒飲まねえから…」
助けを求めようと思ったのか、恋次は一角や弓親を探すと、いつの間にか彼らは我関せずという雰囲気で隣の座敷で酒を飲んでいた。



『恋次さんも、もっとのみましょーよー』
ふと顔を上げたかんろは、恋次のお猪口が空になっていることに気づくと、ニコニコと笑いながら自分の近くにある徳利に手を伸ばした。
そして少し遠い恋次のお猪口に酒を注ぐために、膝を立てて徳利を持った手を伸ばす。

『おおっとー』
「え…!?」
いきなり膝を立てたからか、くらりとよろけたかんろは、隣にいたイヅルに覆いかぶさるようにこけてしまった。



「うわぁ…」
ダンっ、とかんろが床に手を付いた音に、それまで窓から月を見ていた弓親がゆっくりと振り返る。
目の前で一升瓶から直接酒を飲んでいた一角は、かんろの手から飛び出した徳利からの酒を頭から被ってしまっていた。




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