第一部 [12/32]


この日は怪我人が少ないのか、ただ十一番隊の隊員がいないだけなのか分からないが、いつもより静かな隊舎内を歩いていたかんろは、目の前を横切る人影に見覚えがあった。

『あ!えっと…ヤマダ……山田花ちゃん!』
呼び止めようとするが名前がはっきり出てこないかんろは、途中まで思い出した名前でとりあえず呼んでみた。

大きく反応を示したその人は、ビクビクしながら声のする方を見る。
かんろと目が合うと左右を確認してから、自分のことか、と言うように自身の顔を指さした。



こくりと頷くかんろは、見たことのあるその困り顔…山田花太郎に駆け寄ると襟巻きをばさっ、と外す。
突然のことにえ!?、と驚く花太郎の顔を気にせずに、かんろが自身の死覇装の襟元に手をかけたその瞬間、ガッ、と彼女の頭が叩かれた。

かんろは突然のことに驚いて後ろを振り向く。
そこには先ほど置いてきた恋次が立っていて、眉間にシワを寄せていた。
走ってきたのか、少しだけ息を切らしている。
「こんな廊下のど真ん中で何脱ごうとしてんだ、変態」
『変態じゃないです、突かれたところ見てもらって早く帰ろうとしてたんです』



変態と言われたからか、先ほどの女だから云々と言われたからかはわからないが、少し不機嫌なかんろはふいっと恋次から花太郎に向きなおして一角に打たれた場所を指さした。
『ここんところ、一角さんに木刀で突かれたの。弓親さんに見てもらえって言われてきたんだけど、見てくれないかな?』
「あ、はい!…でも傷の場所的に僕でいいんですか?ほかの…女性の隊員を呼びますよ」
「あー、じゃあそうs『花ちゃんでいいよ、待つのめんどくさいから』…おい!」
恋次の言葉を遮るように言ったかんろは、後ろで呼びかける恋次に目を向けずに、花太郎の袖を引っ張りながら近くの部屋に入っていく。



ふたりの後ろを追いかける恋次がその部屋に入ろうとすると、ズイっとかんろが顔を出した。
『何付いてきてるんですか、変態ですか』
「はぁ!?」

目の前でバタンと閉められた扉にガンっと蹴りを入れる恋次は、十一番隊隊舎へ先に帰ることを部屋にいるかんろに言うと、ドスドスという足音が聞こえてきそうなほど乱暴にで四番隊隊舎をあとにした。



「じゃ、じゃあこれで終わりなのでこれからは気をつけてくださいね。木刀でも突かれたら下手したら死んじゃいますから」
血の出ていた場所の治療を終えた花太郎は困り眉のままかんろに言った。

はーい、と軽く返事をしたかんろは椅子に座りながら、足をバタバタと前後させて道具を片付けている花太郎を見ていた。
『でもさー、入りたかった十一番隊に入隊できて、席官にまでなれたんだから張り切っちゃうのはしょうがないよ』
腕をあげて体を伸ばしてからぱっ、と立ち上があり、花太郎にありがとうとお礼を言ってからかんろは部屋を出た。




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