第一部 [9/32]


「…誰だ、てめえ」
少し焦りの見える顔でしっかりとかんろを見つめて問いかける一角と、目の前のことに頭がついていかない様子の恋次。


思いもしなかったその問に答えたのはかんろでも、弓親でもなく、ずいっと出てきた大きな大きな隊長だった。
「なんだ、かんろじゃねえか」
剣八は、何に驚いてんだと、不思議そうに一角たちを見下ろしている。

「さすが剣ちゃん!つるりんとは大違いだね!」
ケラケラと、やちるが楽しそうに笑いながら、かんろの膝から剣八のもとへと飛び跳ねた。
相も変わらず間抜け面な一角たちにひとつため息をついてから、かんろは昨夜から今朝にかけてのことを説明した。



*****



「なるほど、じゃあその変な薬のせいで女になっちまったのか」
すべてを理解した、というように腕を組んで頷きながら言った一角のその一言で、今度はかんろたちがきょとんと間抜けな顔をしてしまう。



「何言ってるの一角…?かんろは初めから女だよ」
もしかして知らなかったの?、と眉をひそめながら一角に言う弓親は、一角と、その隣で信じられないといった顔でかんろを見てる恋次の顔を交互に見ていた。



徐々に頭が状況に追いついたのか追いつけなかったのか、大きな大きな驚きの声を上げた恋次と目の前のことを必死に確かめようとかんろに詰め寄ってくる一角とで部屋の中が騒がしくなる。

剣八はあきれて、やちるを背中に乗せたまま部屋を後にした。


その直後、恋次の大きな声を聞いた隊士がやってきて、一角から放してもらえないかんろの代わりに、隊士たちには弓親が説明をしていた。





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