第一部 [8/32]


「あ!あまちゃん!!」
可愛らしい声とともにぴょーんと背中に飛んできたのは十一番隊の副隊長である草鹿やちる。
飛びついた背中から首を伸ばして、かんろの横顔をニコニコとしながら見ている。


十二番隊から帰ってすぐに、机の上に置かれていた四番隊からの破損報告書に頭を悩ませていたかんろは、やちるに微笑みながら朝の挨拶をした。

やちるは、おはよう、と言いながら背中から膝上へと移動してかんろににっこりと笑いかける。
「今日はちゃんとお胸があるんだね」
楽しそうな声で副隊長が膝の上でさらに口角を上げた。


『十二番隊のおかしな薬のせいですよ』
でもそのおかげで筋肉が付きました、と返事をする。



「じゃあそのうち戻っちゃうんだね」
つぶやくように言う副隊長が少しだけ寂しそうに見えた。
そうですねー、と軽く同意の言葉をかけながら副隊長を抱き上げて近くの戸棚に歩く。
副隊長が隊長よりも先に来るということは、おやつが欲しくなったからかなー。
いつものおやつの時間よりは早いな、と気になってはいたけども、副隊長が少しでも大人しくなるならいいやと思う。

小皿にこんぺいとうを入れて副隊長に渡してから自分の席に戻る。
とてとてと副隊長が後ろから付いてきたと思ったら、再び膝の上に座ってきた。
「今日はね、あたしここに座るの!」
楽しそうな副隊長は、ルンルンと体を前後に揺らしながら言う。
膝の上に座られると前の書類が全く見えなくなるんだよなー。



どうしようかと悩んでいるとまた部屋に誰かがやって来る足音が聞こえた。
誰かなー、なんて首をかしげて戸が開くのを待てば、書類をやってくれそうな弓親さんではなくて一角と恋次が見えた。

ああ、残念。
その後ろの隊長はもっと書類とは無縁の方だ。


朝から部屋に籠るなんて辛気臭いな、と二人の後ろからとてもつまらなそうに入ってきたのは更木隊長。
あなたがもう少し書類をしてくだされば、と思いながらおはようございます、と挨拶をする。

「あれ、副隊長かんろのところにいたんですか。…って今日何か予定でもあるのかい?いつもより美しいじゃないか」
隊長の後ろからひょっこり現れたのは弓親で、かんろと目が合うなり、隊長や一角さんの間をスイスイと流れるように歩いて楽しそうに近寄って来た。
「少し大人びてるね、何?十一番隊で色目でも使うのかい?」
かんろの頬に手を当てて、からかうように話してくる弓親が本物か、少し疑問に思ってしまった。


「おいおい弓親、こいつがこの隊で色目使ってどうすんだ、かんろ男色だったのかよ」
弓親さんの後ろから一角さんと恋次さんが顔をのぞかせる。

ぱっちりと目が合う二人は間抜けな顔をしていて、この顔の先輩たちならきっと今日はいいところまでいけるな、とこれからの稽古のことを考えてしまった。



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