第一部 [18/19]


使われることの少ない自分のベッドの上に、未だ自分の尻尾を抱きしめながら寝ている少女を置きながらシャルナークはふうとため息をついた。



もう少しでシャルの部屋につくところまで来て、ノルは糸が切れた操り人形のようにがくんと膝をついて眠ってしまった。仕方がなく持ち上げて運んできたが、少女の軽さに少し驚いた。
足枷のついている場所には痕が残っている。

視界に入ってきたノルの卯の花色の髪の毛。無意識に手が伸びていた。月明かりが差し込んで、キラキラと輝いているように見えた。

「あ、血がついてる」

自分もノルの横にごろりと寝転んで、部屋に置いているウェットティッシュでノルの髪についている返り血を丁寧に取り除いていく。
そういえばと、ノルの腕に目を向ければ、白練色のシーツの上に乾いた血がパラパラと落ちていて、わずかに腕にも残っていた。
腕の血もとってあげようと手を伸ばせば、その手が触れる前にノルは窓から入り込む月明かりから逃げるように体の向きを変えて、体勢も犬や猫のように丸まってしまった。


「明日は朝一番に体洗わなきゃな」
ゆっくりとベッドから起き上がりながら体を伸ばしてからパソコンの前に座る。
ノルが寝ているから部屋に明かりなんてつけていない。
ボタンを押せば、ぶぉおんと機械音がしてパソコンの画面がぱっと明るくなる。
近くはないけれども、この明かりで目が覚めてしまわないように少しだけ画面をずらしてから、キーボードを叩き始める。



この間まで集めていた情報を読みやすいようにまとめ直していると、画面の端にピコンと小さな吹き出しが現れた。
「誰だろう」
小さな吹き出しが消えてしまわないうちに、マウスを動かしてポインタをそこに移動させる。そのままマウスのボタンを押せば、画面に広がるのはメール画面。
新しく届いたメールを示すマークのついたメールの本文を開けば、差出人は同じ建物の中にいるはずのクロロからだった。
さっき会った時に伝えればいいのに、今突然思いついたのか、伝えるのを忘れていただけか。

本文の内容はいつも通りあっさりとしたもの。必要最低限の一言だけ。

明日パクが来る。

本当にこれだけだった。



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