第一部 [19/19]


ノルが目を覚ましたのは、太陽が昇りきってからだった。
頭までかぶっていた布団を誰かに剥ぎ取られてしまい、いつの間にか抱いていた枕を、眩しさを嫌うかのように強く抱きしめてから、ゆっくりと体を起こす。

「おはよう。警戒しているんじゃないかと思っていたけれど随分ぐっすり眠るのね」
聞いたことのないその声は、落ち着いた大人の女性のもので心地よく感じる。体を起こしはしたが、まだ寝ていられる体は両目のまぶたを開くことをしていない。
「ここの部屋の主を気に入っているだけかしらね」
ふふふと女性の口から笑みがこぼれるのを聞きながら、再び眠りについてしまいそうになるノル。

すると、ウトウトし始めたノルを現実に引き戻すかのように、頬に手が置かれた。少し冷たさの感じる手に反応してあくびをしながらノルは目を開けた。

目の前には明るい髪に大胆な服装で、にこやかな表情の女性。
寝起きの頭で考えることはうまくできない。
「パクノダよ。名前はノルで合ってるかしら?」
わずかに首をかしげながら尋ねるパクノダに、ノルはこくんと頷いて返事を返した。





「はい、もうお昼過ぎちゃったけど、これ食べたら外へ出かけましょう」
コトと目の前に出されたのは、ワンプレートに乗せられた美味しそうな料理。ノルにとって初めて見る温かみのある手料理。
皿の横に置かれたスプーンを恐る恐る手に取って、皿にちょこんと可愛らしく乗っているまんまるいオムライスをつつく。
スプーンとゆっくりと飲み込みながら、ふわふわだった卵はトロトロな卵へと変わった。そのままオムライスを一口分救い取れば、断面から見えた赤いケチャップライスにノルは驚いた。
まじまじとスプーンの上のオムライスをまんべんなく観察してから、ぱくりと口に入れる。
『ん!』
自分で獲っていた生肉や、見世物小屋で与えられていた食べ物とは違う初めての複雑な味に、驚きと戸惑いを感じながら、ノルは美味しそうにプレートの上のオムライスやサラダ、フライドポテトにチキンを食べきった。



「団長、今日この子借りるわよ」
食べ終えた食器を片し終えると、パクノダはどこから出したのか、ノルに新しい服を着させて、クロロに一言告げてアジトを後にした。




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