第一部 [17/19]


男が去ってからは、アジトまで問題なかった。



アジトの広間へ行けば暗がりの中に、一箇所だけロウソクで囲まれた周りより明るい空間がある。その中にいたのはクロロだけで、静かに読書をしていた。ノルたちが入ってきた気配を感じたのか、ぱたりと本を閉じれば、近寄ってきたシャルから宝を受け取る。パラパラと軽く中身を確認したような仕草をしたと思えば、お宝の本は先ほど閉じられた本と同じように積み上げられた山積みの本の上に置かれた。

「それで、フェイタンを納得させることはできたのか?」
人を小馬鹿にしたような表情を見せながらノルに問いかければ、ノルの前にいたフェイタンが鼻で笑った。
「人殺せることしかわからなかたよ」

「能力はいろいろ使えそうだね。物語を覚えていればいいから応用も効きそう」
だけど、とシャルは少し真面目な顔になって言葉を続ける。
「あの男は怪しすぎるね。また接触してくるだろうし、このまま放っておくわけにはいかないよ?」
どうする?とクロロに尋ねた。しかし、クロロ本人はあまり気にしていない様子で、問題ない。とだけ答えてまた本を手にとった。
電話で報告した時から彼はなんの反応も示さなかった。ただ本を手に入れられたのならまっすぐ戻って来いとしか言わなかった。
彼が興味を示すのは宝物や珍しいものと、彼の趣味とも言える本だけだと、改めて思いながらシャルは小さなため息をついた。


「明日、パクノダが到着するだろう。気になるなら調べればいい」
本から目を離さずに言うクロロは今回のことに全く興味がないらしい。ヘタをしたら自分たちも面倒くさいことに巻き込まれる事を分かっているのか疑問に思ったが、明日パクノダが来るのなら彼女に調べてもらってから今後のことを決めたほうがいいだろうと思う。
それよりも今はノルをノブナガに預けなければ。ちらりとノルのほうを見れば、ふわふわな自身の尻尾を抱きしめていた。少し眠たくなってきているのか、重そうな瞼で今にも目を閉じてしまいそうだった。
「ノル、付いてきて。ノブナガの所に行こう」
このままここに残っても何も進まない。フェイタンも何も言わないから口に出さなくてもノルがここにいることは了承してくれたと思っておこう、とシャルは考えた。



世話役のノブナガにノルを預けるために広間を出たが、彼の姿はどこにも見当たらない。いつもならフィンクスやウヴォーギンとともに酒を飲んでそのまま寝ているのだが、今日に限ってアジトの外にいるらしい。
既にノルは瞼を閉じていて、かろうじて掴んでいるシャルの服のおかげて歩いているようなものだった。

「しょうがない、今日は俺の部屋で寝なよ。俺は今日寝る暇ないだろうし」
『ん…』
自分に向かって言われていることぐらいしかわからないノルは、目を開けることなく小さな返事をした。




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