第一部 [16/19]


キィンと刃物同士がぶつかる音がした。
フェイタンの動きをしっかり捉えることのできなかったノルは大きく目を見開いて、目の前にいるフェイタンを見た。
唯一表情を読み取ることが出来るその目は笑っているようで、弧を描いていた。

直ぐにバンっと鉄砲のような音がしたと思えば、それはフェイタンの仕込み傘からの発泡で、男がフェイタンの傘の先から発射された弾を避けようと後ろに飛び退いていた瞬間に、ノルを掴んでいた男の手は離れていった。
男から解放されたノルは、いつの間にかフェイタンの腕の中にいた。かと思えば直ぐに後ろのシャルへと投げ飛ばされた。

「邪魔よ」
『ぅわ!?』
「おっと!」
受け止めたシャルは、ノルの腕の様子を見てからしっかりと傷口を止血しようとした。しかしその傷口はゆっくりとふさがりつつあった。
不思議に思うシャルだったが、先ほどが発動と同時に傷は治っていくと言っていたからこのことなのだろうと、そこまで気にすることはなかった。



「本当は本体が欲しかったのですが、まあコレが手に入っただけでもよしとしますか。ああ、それはあなた方に預けます。私が引き取りに行くまでお好きにしてください」
ふうと少し大げさにため息をついた男は、やれやれとでも言うように自分の体の前で両手をひらひらと動かした。

「では、これにて失礼」
男がすっと一歩下がると、彼の目の前に赤いカーテンのようなものが上から現れた。バシャッと地面に叩きつけられるように落ちていくそれが血液だということに気が付くと同時、男の姿は消えていて、残された血がゆっくりと土の中に吸い込まれていくように沈んでいった。



**********



「とりあえず団長に報告したよ。このまままっすぐ帰って来いだって」
さて、と倒れた木に腰掛けていたシャルが立ち上がったのを見て、しゃがみこんでいたノルも立ち上がる。
ようやくか、とでも言いたげなフェイタンは疑うかのような眼差しでノルのことを見ていた。



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