第一部 [14/19]


今回は好きに動いていいということを言われていたノルは、深夜丁度に決行したいと告げた。無事盗む事ができるのなら時間についてはどうでもいいことなのでほかの二人は了承する。



そろそろ12時を回るという時間、ノルは目的の本があるという博物館の倉庫の脇にある木陰に隠れていた。シャル達は少し離れていて欲しいということで、少し後ろでノルの様子を見ながら待機していた。


『“フェアリーテイル”Ver.吸血鬼』
その言葉と同時にノルは、自分の腕を噛みちぎっていた。

「「!?」」
シャルナークだけでなく、フェイタンまでもその行為に驚いていた。月明かりに照らされたノルの片腕からはだらだらと血が流れている。ノルの金色だった目は青白く光っていて、口の端からは鋭い牙が見えている。それだけではない。肌もだんだんと透き通るように青白くなり、綺麗な白髪もどこか青っぽく感じる。


ふらりとどこか不自然に立ち上がったノルは、まるで本物の獣や怪物のようだ。ぎこちなく歩き出したノルは、警備の人間を視界に入れた途端にきらりと目を光らせて素早く走る。
スッと警備員の背後をとるとその首元に自身の牙を突き刺した。ジュルと音を立てながらノルは血を吸っている。ゴクリと飲み込んだその表情はどこか妖艶で、口元からたれている血でさえ美しく思えてくる。
ちらりとフェイタンの方に視線を向けたノルだが、すぐに倉庫の中へと駆けていった。



「獣っていうよりもドラキュラだね。…ん?フェイタン、どうかした?」
「別に。どうもしてないね」
シャルナークがノルに感心していると、フェイタンから緊張しているような、いらつきとは違うピリっとした空気を感じた。


(見ていて)
ノルはフェイタンの方を見たときにそう言ったのだ。
後ろにいるシャルナークは気がついていない。あの言葉はフェイタンに告げたもの。それが分かり、いらつきや戸惑いがフェイタンの心をいっぱいにした。




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