第一部 [10/19]


ノルがアジトに連れてこられてから一週間が過ぎた。与えられていなかった部屋は、世話係りのノブナガと同室になり、ついでに服も借りることとなった。
その間、ノブナガに言葉を教えてもらい、ノルはハンター文字を読み書きできるようになっていた。


それを知ったクロロは、ノルを連れてくるようにノブナガに言い、フェイタンと4人がはじめにノルを連れてきた部屋に集まった。

「言葉は覚えたと聞いた。これからもう一度お前自身のことについて話してもらう」
『…話したら殺すの?』
クロロの言葉にノルは眉を下げた。質問されたクロロはお前次第だと答えると口を閉じてノルをじっと見つめるだけだった。

『…わかった。話す。名前はノル。白い悪魔とも言われているけど、魔獣との混血で生まれたことを呪われていると言われているだけだと思う』
クロロを見つめ返しながら話す。
「念能力はフェアリーテイル。読んだことのある話の登場人物のようにできる能力。話によって発動条件が違うし、どんな話か忘れたらその話の能力は使えなくなる」
ノルは、ウヴォーギンを木に変化させたのは“トゥルーデおばさん”、自分が小さくなったのは“親指姫”だということも付け足してクロロ達に教えた。

「オマエ、今まで村人に避けられて見世物小屋に一人だたくせになぜいろんな話知てるか。念も誰に教わたか教えるね」
いままで黙って聞いていたフェイタンが睨みつける。

『…どっちも先生に教えてもらった。名前はわからない』
話を聞いたクロロは沈黙を続けている。ほかの団員たちも黙っている。


「…殺しをしたことはあるか」
長いように感じた沈黙を破ったのはクロロだった。いきなりの内容にノルは質問の意味がわからない顔をしている。

「盗賊に興味はないか?」
今度はさっきと違う質問を投げた。それで、ノル以外の者は気がついた。クロロは旅団に入れようとしていると。

「団長、そいつ入れるつもりか。ワタシは反対ね」
眉間のしわを深くしたフェイタンが言う。しかしクロロは全く気にしていない様子だった。入団は幻影旅団団長として言っているのだ。団員がなんと言おうとも、すべての決定権は団長であるクロロが決める。

「入団…というわけじゃないさ。欠番もないしな。ただこの能力は俺たちにとって役立つはずだ」
「本人はお宝だし一石二鳥ってか?」
クロロの言葉に、ノブナガがくっくと笑いながら付け足した。ノルの世話をして気に入ってきてたから、賛成なのだろう。しかしフェイタンの眉間のしわは浅くならず、怪訝そうな顔をしている。能力が気に入ったのならばクロロの念能力で奪えばいいじゃないか。自分たちにすぐに捕まってしまうような者を旅団に入れておいても足でまといが増えるだけだ。そんな事を思っていた。

しかし、フェイタンがどうしてそこまで嫌なのかクロロは理解できなかった。お宝と役立つ能力が手に入るのになぜそんなに拒否しているのか。ノブナガは賛成な雰囲気を出している。ほかの団員も団長である自分が言えば嫌とは言わないはずだ。最近入団したヒソカも毛嫌いするものはいるが旅団に入っている。どうにかしてフェイタンを納得させよう。そう思ったクロロは、少し待っているように告げて部屋を出ていってしまった。

少しの気まずさがある。部屋の空気は落ち着かない。フェイタンの不機嫌とノルの戸惑い、そしてノブナガの面白そうな雰囲気が部屋に充満していた。




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