第一部 [9/19]


楽しそうに笑うノブナガは、菓子パンと飲み物をいくつか抱えてウヴォーギンとノルのところへとやってきた。

「ほれ食え、飯だ」
ノブナガがノルにパンをひとつ差し出したが、首をかしげるだけで受け取る素振りはなかった。

「どうした?食わねえのか?」
パンを受け取ろうとしないノルを見て、不思議そうにウヴォーギンが聞いた。
「そういやオレ達が見つけた時に生肉食ってたな…食いもんも知らねえのか?」
「生肉…?」
ノブナガの言葉にマチが反応し、三人に近寄ると、ノブナガはノルを見つけたときの様子を話した。マチはまるで本物の獣じゃないかと呟くと、口のはしに拭いきれなかった血をつけているノルを見つめた。



「しょうがねえな…」
普通の食事に慣れさせようとしているのか、ノブナガはパンを袋から取り出すと自分が食べる様子を見せ、ノルにも自分の食べたパンを差し出す。首をかしげたままゆっくりとパンを齧ったノルは、咀嚼を始めた。
食感も味も初めてのことに戸惑うような表情をしていたが、ごくんと飲み込むもうひと口齧った。すると美味しい味を理解したのか、少しずつ食べるスピードが早くなっていく。ノブナガは満足したように自分もパンを齧った。


その後、お腹いっぱいにしたノルは寝てしまった。別室に連れて行けばいいのだろうが、部屋を決めていなかったので、そのままノブナガ達は広間で眠った。




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