第一部 [5/19]


細い通路の奥。そこには広く、一つの部屋になっていていくつかの檻があった。その中で大きな檻の前にクロロが立つと、団員たちが集まる。


「こいつか、団長」
「間違いない。連れて帰る」
フィンクスは檻を蹴破ると中に入った。薄暗い部屋でよく見えなかった檻の中にいる人影は、檻が壊されてもピクリとも動かない。近寄るフィンクスにさえ怯える様子ひとつ見せないその姿に一瞬生きているのかと思うほどだ。


『だれ』
威嚇を含んだその声の主は自分に近寄るフィンクスをひと睨みする。

「殺気はそこそこってか?」
にやりと口端を上げたフィンクスは一瞬にして人影の後ろを取り、逃げないように腕を掴みあげた。身長差のおかげで地面から足が浮いているが、その足からは枷がぶら下がっていた。

檻から出ると、壁に取り付けられているろうそくの灯りのおかげで、その姿がわかりやすくなる。それはチラシに書いていた人間と魔獣との混血というよりは、クロロが言っていたハイブリッド生物に近いもののようだ。
フィンクスは後ろから今まで見にくかった人影の姿を見る。短い髪は白く、太陽の下に出ることがないのか、古びた服の裾から見える手足や首元は、汚れているが透き通るくらい青白く感じた。さらに、片方の太ももには鱗のようなものがあり、腰辺りからは狼の尻尾、頭にはヤギの角に猫のような耳が生えていた。

「こんなガキに足枷か」
フィンクスが枷をつけたまま重りを引きずるようにして出てくると、ノブナガが刀で重りと鎖の境目を切った。


『あんたら、何?』
未だに怖がる様子も動揺する気配もないことに、クロロはニヤリと笑みを零した。
「俺たちに恐れはないか。おとなしく一緒に来てくれれば悪いようにはしない。アジトについてから話してやろう」

くるりと踵を返したクロロは入口に待機していたシャルとウヴォーに帰ることを告げてまっすぐアジトへと向かう。


「ねえフィンクス…女の子を小肩に担ぐのはどうかと思うよ」

「…は?」
よっこらしょというように少女を肩に担ぐフィンクスに、呆れ顔のシャルナークが声をかける。
対してフィンクスは、何を言ってるんだとでもいいたげな顔をするだけで、すたすたと小屋から出て行ってしまった。




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