沖縄移住延期

2005年2月、この頃になると、お店の経営計画、沖縄移住計画も形になってきて、移住も秒読み段階にっ入っていた。

そんなある日の深夜、僕は杏伍から突然呼び出され、24時間営業のファミレスて落ち合った。
席に着いて注文をし、後は話を聞くだけとなったが、杏伍は話を始めない。

しばらくして杏伍はひどく言い辛そうに「沖縄へ行かない……」と、つぶやくように言った。
僕は一瞬、言葉を疑った。
もう来月には航空チケットを買うつもりだったのに……。
なぜ!?今になって……。
僕は混乱しそうな頭を何とか冷静に保ちながら理由を問い詰めた。
「本とか読んで、やっぱり商売をやる自信がない」と杏伍は答えた。
そして「彼女との結婚を真剣に考えた時、やっぱり安定した生活を過ごしたい」と付け加えた。
だが、僕にとってそれは答えになっていなかった。
杏伍にお付き合いしている人がいたのは知っていた。
僕は、杏伍が一日も早く彼女と結婚できるように、沖縄で安定した生活を早くさせてあげる為に沖移住計画を急ぎで進めていた。
最終的には、沖縄へ来て良かったと杏伍と彼女が笑って暮らせる事を最優先に考えていた。
それだけに杏伍の「沖縄へ行かない」発言はショックだった。

僕が杏伍と沖縄へ移住してお店を経営したいのには理由があった。
もちろん信用できる相手だからは言うまでもないが、普段の杏伍は、悪いことは全て回りの人のせいにするようなところがあった。
だから杏伍には、どんなに悪い状況下でも、自分の力で良い方向へ変えられる人になって欲しいし、目標へ向かって、苦難を乗り越えた時の達成感を味合わせてあげたかった。
僕は今までの付き合いの中で、そんな杏伍を一度も見たことがなかったから。

僕は今、自分が思っている事全て杏伍へぶつけた。
子供同士の昨日やそこらの約束ではないこと。
乗りかかった船を途中で降りないで欲しいこと。
結婚は本人同士の自由であり、反対はしないけど、その前に約束は守って欲しいこと。
それでも、僕の想いは杏伍に通じず、「沖縄へ行かない」を繰り返し言うのみだった。

どれぐらい説得をしただろうか、外はもうすでに明るくなっていた。
お互いに無言の時間が流れた。
沈黙を破るように僕は言った。
「そんなに沖縄で暮らしたくないのなら、僕に分からないように移住か失敗で終わるように仕向ければいいじゃん」
半ば僕の開き直りでもあり、誤魔化しでもあった。
何とか沖縄移住さえしてしまえば、実際に沖縄で暮らせば杏伍の考えも変わると思ったからだ。

この僕の提案が功を奏したのか、移住を10月に延期し、
それまでに杏伍が彼女に住についての理解を深め、一日も早く彼女と結婚できる状態に持って行けるように沖縄で頑張るということで、杏伍は納得してくれた。

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