ジャパニーズレストラン

あなたが行ってみたい外国はどこですか?
そんな質問をされたら、僕は深く考えずに、なんとなくアメリカと答えるだろう。
特別、海外へ行ってみたいといとか、あこがれがある訳もない僕に向かって、副島さんの口から「マイアミ」という言葉がでた時は一瞬、マイアミってどこ?と思った。

副島さんは話を続けた。
「マイアミでジャパニーズレストランを開きたい。ずっとビジネスパートナーを探していた」と目を輝かせながら言った。
副島さんの話は更に続き、お店の内装とか、どんな料理かいいかとか、一番最初に採用したアルバイトの女の子と結婚したいとまで話が続いた。
ひととおり副島さんの話を聞き終えた僕は「こんな自分で良ければよろしくお願いします」と言って深く頭を下げた。
僕にしてみたら断る理由などない。
知らない土地で人生を一からやり直してみるのも悪くはないだろう。
でも副島さんの話で一つだけ引っ掛かるモノがあった。
それはマイアミは五年後であることと、二人で1000万円、つまり一人500万円の資金を用意すること。
マイアミ行きが五年後なのはともかく、お金が絡んでくると話は別だ。
実は全て嘘でお金を騙し取られるかもしれない。
それに出会ってまた日も浅い副島さんを100パーセント信用することはできなかった。
だからといって、この話を断るのは勿体無いともおもった。
そこで僕は副島さんにある条件を出した。
それはマイアミへ行く五年間、僕と共同生活をして、一緒に苦労しながら開店資金を貯めること。
副島さんは僕の提案した条件を何の躊躇もなく了承した。


僕たちが借りたアパートは、二階立てのレンガ調の造りをしていた。
目の前には大型スーパーがあり、駅から歩いて十分と便利な立地。
ここがマイアミ行きを実現するために二人で借りたアパートだった。
あの副島さんの申し出から部屋を借りたり、家財道具を揃えたりと、まるで僕が抱いていた不安を打ち消すかのように全てが急激に話が進んだ。
ここまで実行力のある副島さんを疑う材料はもう何ひとつない。
僕はすっかり信じ切っていた。
ところが、タイミングの悪いことに副島さんの転勤が決まった。
転勤といっても今の店からそう遠くない場所であった。
だからアパートから通えない距離ではなかったが、副島さんは「店の場所、実家の方が近いから仕事が落ち着くまで一人で住んでなよ」と言った。
僕は少し不安に感じたが、副島さんに言われるまま一人でアパートに入居した。

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