2年後の約束

2003年10月、僕はある事で悩み、真剣に死を考えていました。
そんな時、杏伍が何かの資格を取るとかで、その試験会場の下見をしたいから付き合ってくれと、試験会場となる某大学へ誘われた。

その日も僕の気分は落ちに落ちていて、誰かと話ができる状態ではなかった。
そんな状態の僕を見て「何かあったの?」と杏伍はしきりに聞いてくるが、僕は相手が杏伍であっても答える気にはなれなかった。
終始無言のまま試験会場の下見を終え、昼食に大学近くのファミレスへ入ることになった。

席に着いてから杏伍が「どうした?」と再度聞いてくるが、僕は相変わらず返事をしなかった。
心配そうな顔をしながら僕を見る杏伍に悪いと思いながらも、不思議なもので一度黙り込みを使ってしまうと、なかなか自分から口を開くことができないものである。

どれぐらい時間がたったのだろうか。
入店した時はお昼のピーク中で満席に近かったが、顔を上げて見渡すと、店内のお客さんもまばらになっていた。

相変わらず何も話そうとしない僕に対して、杏伍がイライラしている様子だった。
そして沈黙を破るように杏伍は言った。
「沖縄へ一緒に移住したら話してくれるの?」と。
冷静に考えたら、僕が何も喋らないから、興味のある話をしてみようという杏伍の知恵だったのかもしれない。
でもこの時の僕は、そんな杏伍の心情を察することができなかった。
杏伍が一緒に沖縄移住をしてもいいと言ってきた!
単純にも僕の心は一気に動いた。

「本当!?」僕は急に人が変わったかのように杏伍に詰め寄った。
杏伍は「うん」と大きくうなずいた。

こうして僕は杏伍と沖縄移住をする約束をした。

杏伍とは、兄弟同様に今まで付き合ってきた。
すべての事において信用できる友達であり僕の良きパートナーだ。
だからコイツと一緒だったら沖縄だろうがどこへ行こうがきっと成功してみせるという自信がある。
絶対うまく行く!この時はそう思っていた。

(※この時の僕の悩みは沖縄とは直接関係ない事なので割愛します)

沖縄へ移住するのは決まったとして、仕事をどうするかが問題だった。
沖縄の失業率が高いのはテレビのニュースなどを観て知っていた。

そこで考えたのが独立開業であった。
以前、僕はパスタ屋でバイトをしていたことがあり、そのお店のパスタが好きだったのだが、残念なことに潰れてしまった。
もう一度、あのお店の味を再現してみたいと思っていたし、幸い僕は調理師の免許を持っている。
ここは思い切って沖縄でパスタ屋を開くことにした。
僕のパスタ屋のプランを聞いた杏伍は興味を持ってくれ、賛成してくれた。

二人で100万ずっつお金を用意して、2005年4月に沖縄へ移住してお店を開くことにした。

[ 4/87 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -