「…ふ…ぅ…っ」
とめどなくあふれ出てくる嬌声を押し殺そうと、かたく目をつむり、己の人差し指に歯を立てる黒子。
細く白い指にうっすら血がにじんでいるのを目にして、青峰は眉を顰めた。
「…ほら、テツ…指噛むなって」
「…や…っ、だ、って…っ」
はじめは苦しさと痛みしか感じなかったこの行為に、黒子が快楽を見出すようになったのはいつの頃からか。
幼く純真で、性の匂いが全くしない固い蕾のようだった黒子をここまで淫らに花開かせたのが自分だと思うと、青峰は堪らない気持ちになる。
「…いいから、声聞かせろって……なぁ、テツ…っ」
「や、ぁ…あぁん…っ!」
感じている声がどうしても聞きたくて、青峰は己の指を2本、小さな口にねじ込んだ。
同時に腰を強く突き入れると、黒子は成す術もなく高い鳴き声をあげるはめに。
「…あぁっ!…ぁっ…あおみね、く…っ」
声を抑える手段を失い、己を犯す男の思うままに鳴かされる。その羞恥心にか、それとも強すぎる快楽にか、黒子は大きな瞳からぽろぽろと涙を零しながら、青峰に縋り付くような眼差しを向けてきた。
「…ほんとかわい…テツ…っ」
そのいじらしい様にうっとり目を細め、青峰はベッドの上に身を起こした。
そのまま自分よりずっと小さな体を抱き上げ座位の形をとると、黒子が青峰の首にぎゅっと抱きついてくる。
「…こら、テツ、んな強く抱きついたら、動けねーだろうが」
このままじゃ、オレもお前もイけねーぞ?
からかうように耳元で囁いてやると、黒子はいやいやとかぶりを振り、
「…やぁ、です…っ、ぁ、もっと、ぎゅって…してくだ…さ…っ」
そんな風に、甘く、舌っ足らずに強請ってくる。
「…ったく、ほんとお前って…っ」
眩暈を感じるほどの愛らしさに、青峰は黒子を強く抱きしめ、煽られるまま下から激しく突き上げた。
「…テツ…テツ…っ!」
「あぁ…っ!あおみ…っ!」
「…ほら、テツ、口開けろ…っ」
「…ぁ…んぅっ」
乱されるまま激しく喘ぎながらも、黒子は青峰の望み通り、青峰の唇を、舌を、従順に受け入れる。
いつだってそうだ。黒子は無条件で、青峰の全てを受け入れた。
名を呼べば変化の乏しい表情に精いっぱいの喜色を浮かべながら走り寄ってきて、青峰の言葉に一喜一憂し、その瞳で、唇で、全身で、『キミといられて幸せです』と、訴えてくる。
その様はまるで――
「…テツ、お前、犬みてー」
「…ぁ、い、ぬ…っ?」
「そう、オレだけの、かわいーわんこ」
「…なら…っ」
黒子は切なげにかすれた声で言いながら、いたずらっぽく笑う青峰のたくましい胸に、頬を寄せた。
「…テツ…?」
「…なら、ずっと…一緒にいてくれます、か…っ?」
捨てずに、誰か他の人間にやることもなく、最後までちゃんと、青峰君が飼ってくれますか?
そう不安そうに囁く黒子に、青峰は目をみはり、
「んなの当たり前だろうが!…ずっとずっと、お前はオレだけのもんだ、テツ…っ」
黒子を抱きしめながら、きっぱりと宣言してみせた。





――とまぁ、過去にはそんな事もあったわけですが、それはさておき。
「…でもよ、オレとお前があのままなら、今頃ガキの1人や2人できて…」
「…るわけないでしょう。いつまでもふざけたこと言ってると、もう一発いきますよ?」
床に正座させた青峰を見下ろしながら、黒子はプラプラ手首を振ってみせる。
試合前のウォーミングアップと同じ動作に、ヤバいこれは本気だと、青峰は大人しく口を閉じた。
そんな青峰に、そこで火神が一言。
「…はっ、最強青峰も、コート離れたら情けねーもんだな」
「…んだと、てめー人のこと言えんのかよ!」
「2人ともお黙り!…です!」
当然のように突っかかっていった青峰と、それを迎え撃つ気満々の火神だったが、黒子に一喝されて、すぐに元の体勢へ。
「…つーか、何でオレまで正座させられなきゃなんねーんだよ。オレは別に何も…」
「…火神君も同じような事ほざいたの、忘れたとは言わせませんよ?そもそも、こんな小さい子供がいる前でケンカした罰なんですから」
腰に手をあててプンっ!と怒りを露わにする黒子。
これはこれで愛らしかったりするのだが、その怒りの恐ろしさを知っている身としては、ノンキに堪能してもいられない。
「で、でも…っ」
「言い訳無用です!」
「むよーです!」
「むよー!」
何とか申し開きをしようと口を開いた火神だが、即座に切って捨てられてしまった。
するとそこに続いた、何とも可愛らしい2つの声。
「かがみくん、せいざー」
「あおみねくんも、せいざー」
そんなことを楽しそうに言いながら、子猫っぽい天使――じゃなかった黒子と、子犬っぽい天使――じゃなかった黒子が、火神と青峰の周りをパタパタと走り回っている。
『…ちくしょう、クソ可愛い…』
その姿に、火神と青峰は声をそろえて呟いた。
2人の猫科の肉食獣のように切れ上がった鋭い目も、今はデレデレに蕩けきってしまっている。
だって仕方ない。自分たちを混乱の渦に巻き込んだ張本人だと分かっていても、この小さい黒子の姿をした子供たちときたら、もう無条件で全てを許してしまいたくなるほどに可愛らしいのだから。
「…いやでも、黒子と言えば猫だろう。ほら、元々こいつ猫っ毛だし、なんか全体的にふわふわしてるし、猫なチビ黒子マジやベー…」
「はぁ?バカかてめーは。ふわふわといったら犬だろう。テツのデカくて丸い目はまんま子犬だし、犬なチビテツ大正義だろうが!」
「…んだと、ふざけんなオレの黒子の方が…」
「い−や、オレのテツの方が…」
そこで、「オレの黒子・テツが一番可愛い」争いが勃発するかに思えた――が、
「かがみくん、けんかはめっ!ですよ!」
「あおみねくん、おこっちゃいやです…」
そう子猫な黒子と子犬な黒子に窘められて、火神と青峰が逆らえるはずもない。
即座に、お互い掴み合っていた手を離すと、
「…黒子っ!」
「…テツっ!」
愛らしさに身悶えながら、それぞれ小さな黒子を抱き締めた。
「くそっ、なんでそんな可愛いんだお前は…!」
「テツぅ…っ!」
あぁ、今のデレっデレな火神と青峰の姿を、氷室と桃井に見せてやりたい。
家族同然の彼らも間違いなく言うに違いない――え、誰だお前!――と。
「…もうそれくらいにしたらどうですか?」
しかし、2人のハッピータイムはそう長くは続かなかった。
小さく低い声でぽつりと呟いた黒子が、問答無用でチビ達を2人から引きはがしてしまったのだ。
「え、なんだよ…」
「…テツ、急にどうした?」
「………別にどうもしません」
そう言いながらも、黒子は不満そうに唇を尖らせ、ぷいっとそっぽを向いてしまった。
――アレ?これってまさか…?
「…ほら、そろそろお昼ですよ。チビさん達もお腹すいたでしょうし、用意しましょうよ」
チビたちを引きつれ、そのままキッチンへと足を向けた黒子の後ろ姿を見送ってから、火神と青峰は目を見合わせた。
「…なぁ、今のって…」
「…やっぱ、そうだよな…?」
そう、先ほどの黒子の態度――それは、ヤキモチ。
火神と青峰が、可愛い可愛いとあまりにチビたちを構うものだから、黒子としては面白くなかったのだろう。
『……やばい、やっぱ本物が一番可愛い…っ』
そのあまりに可愛い行動に身悶え、2人はその場からしばらく動くことが出来なかった。




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