第19.5話 讌聖次の記憶

 俺の両親の葬式から一年後。

 何故かおばさんは再び喪服を身につけていた。

「どうしたの?」

「…………昔の同僚の、奥様がお亡くなりになられた」

 おばさんは今まで聞いた事もこれから聞く事も無いだろう、驚くほど淡々とした口調で呟いた。
 その顔は信じられないくらい真っ青だった。いつものおちゃらけているおばさんでもなければ、うわ言を喋り続けるおばさんとも違う、静かにおかしくなっているおばさんがそこにいた。
 いや、もしかしたらあの時のおばさんはいつも以上に意識がはっきりしていたのかもしれない。
 あの時だけは、おかしいままのおばさんでも良いと思えた。


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