子役×落ち目アイドル
(突発短編)
ある日の収録日の楽屋。
いや、ある日と言っても、私にとっては3ヶ月ぶりの久々の仕事。
例えその仕事が、子供番組であろうとも、マネージャーがやっととってきた国営番組の仕事。
私は全力投球するつもりだった。
――だかしかし。
「ちょっとオバサン!さっきのカットは、マリンさんが主役なんだから出しゃばんないでよ!」
「そーよそーよ!マリンさんの前に立つなんて、10年早いわよ」
「ななな、何ですってえ!?」
こんな小生意気なお子様達と一緒に、にっこり笑顔で共演なんて出来るわけない。
私を誰と存じているのだ。
確かに最近は、見る目がない前衛姿勢の番組制作者が増えたせいで、メディアに姿をあまり見せないでいるが、私は一世風靡した大女優なのだ。
こんな小学生の小娘どもにとやかく言われる覚えは…
「やめなよ二人とも。大先輩に失礼なことを言っちゃ駄目」
私の怒りが爆発しかけたまさにその時、一人の少女が爽やかに現れた。
――最上茉菻(もがみまりん)。
一昔前の私と同じように、今をときめく子役兼スーパーアイドルだ。
―――いや、それだけではない。
「すみませんレイコさん。ほら、みんな待ってるから、二人ともリハに行こう」
「は〜い…」
「あ、そうだレイコさん」
二人を促し先を歩かせると、マリンはゆっくりと優雅に振り向いた。
「――私より目立ったお仕置き、楽しみにしておいてくださいね?」
そう言って悪魔――もとい私の恋人は、至極爽やかに楽屋を後にした。
end
後書き
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