ソーダ水
(ラピスラズリの法)


溶ける、解ける、融ける。

「氷がとけてくんて、幻想的やなぁ」

まぁるい氷をウィスキーに浮かべて、コハクはふっと吹くように言った。
更けた夜と足並み揃えて、酔いが心地好く覆い被さっているのが分かる。

「早く飲まないと薄まりますよ」

「ん〜。でも終いまで見てたいと思わへん?」

ウットリと、けれども一点集中するコハクにとって、ソーダの忠告はあまり効果的とは言えない。

「…まぁ、私は所長が不味い酒を飲もうが構いはしませんが」

「なら、一体どうしたら構ってくれるん?」

一回り小さくなった氷を見限り、コハクはソーダへと視線のみを合わせる。
冠した名の通り、妖しく光る琥珀色の眸は異様なまでに艶かしくて。

「…それだけで、十分ですよ」

そして、ソーダは一瞬で、飲まれるがままの液体となった。

流れ込んでくるソーダの熱は、コハクをとかすには充分で。



end



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