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話によると、案の定ズッケェロのお仲間に行き先がバレてるどころか既に先回りされているらしい。
「誰なんだ?この男は誰なんだよォーッ!」
「何としても!この野郎に今の男の正体をゲロさせてやるぜッ!」
慌てふためくナランチャを後目にミスタが足元の生首に手を伸ばしかける。
『いや、ちょっと待ってよ。こいつ庇う訳じゃないけど、目焼かれても吐かないってことは多分何したって喋ってくれないね。』
「ああ、レイの言う通りだ。それに実際スタンドの正体は知らないのかもしれない…仲間にさえ秘密って可能性は大きいからな。」
「じゃあどうするんだレイ、ブチャラティ!?」
これはまずい。みんながみんな焦りで冷静さを失いかけている。こんな時は一旦落ち着いて、いくつか案を考えるべきだ。この生首男を拷問している時間はないからそれは却下だとして…無線繋いで人質に取る?いや、それで逃げられてしまったら元も子もない。ならば無線の男を始末する方向で考えよう。先に私たちの誰かが上陸して様子を探るとか。いやいやそんなことは不可能…いや、待てよ。もしかするとジョルノの能力を使えば…
「この船が入港する前に誰かが先に上陸してその男を捜して始末すればいい…」
島を指さして呟いたのは、さっきまで私と一緒にハブられていたジョルノだった。
「おまえ頭悪いんじゃあないのか?この船より先に上陸だって!?泳いででも行くってのかよーッ!」
ナランチャの疑問も最もだけど、彼の能力を使えばもしかするともしかするんだよ。
『いや、ジョルノの能力で船より早く泳げる生き物出せればさ、可能性はあると思うよ。』
「はい、ぼくはこの浮き輪を魚に変えられます。そいつにひっぱってもらえばいい。もちろんぼくのスタンドだから行くのはぼくです」
そう言うジョルノの足元に目をやると、既に浮き輪は人が幾人か掴まれそうな魚に変化していた。
「アハハハハー!おまえが行く?それはいいだろう。なかなかいいアイデアを出すボーヤだ。だがおしい事にそいつの顔も名前もおまえはわからない!カプリの港は観光客だらけだぜ!その中からどうやってそいつを見つけるつもりだ!」
ジョルノに詰め寄ってこれでもかと捲し立てるアバッキオに少しカチンと来る。
『あのさー、そんなに言うんだったらあんたがもっといい案出しなよ。私はジョルノに賛成だけど。』
「…てめえは何なんだよ、あ?」
今度は標的を私に変えたらしい。ゆっくりと歩みを進めて来るアバッキオにそろそろ胸ぐら掴まれそうな感じだ。
「おれはジョルノとレイの言う事に賛成だぜ」
意外な助け船を出したのはじっと話を聞いていたミスタだった。
「その魚はよォー、何人までひっぱれんだジョルノ。おれも行くぜ」
屈んでブーツから武器を取り出すミスタはもういかにもやる気満々という感じで、ひとまず今回の論争に決着は着いたらしい。
『わたしも、私も行くよ。何か役に立てる気がする、多分、きっと』
正直そんな気はちっともしないけど、とにかくバチバチ敵対してるアバッキオと嫌われてるナランチャと同じ所にはいたくない。
「よしッ、じゃあ決まりだな!行くぜッ」
ミスタのかけ声で急いで魚にしがみつく。賭けに近い危険な作戦だけど、この3人なら生き残れる…何となくそんな気がした。
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