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「まさかてめー!どっかに隠れてケケケと喜んでんじゃあねーだろーなあーッ!?」

痺れを切らしたミスタが、浮き輪を手に取り甲板から飛び降りる。

『いや、それはないかな。だってこの辺に隠れられそうな所はなさそ…』

しんと静まり返る船上。おかしい。結構な高さがあるのに、ミスタが着地した音も船の揺れも無いなんて。

「ミスタ?何やってんですかミスタ?」

どうやらフーゴも異変に気付いたらしい。下を覗き込んで声をかけている。私もフーゴに駆け寄ってデッキを見渡す。

『……ミスタ?』

ミスタが降り立ったはずのデッキには、さっき彼が持ってた浮き輪がゴロゴロと独りでに転がっているだけ。ミスタの姿は、ない。

「まさか…!」

どうやらブチャラティは勘付いたらしい。私はてっきり、追っ手は後ろから追って来るものだとばかり思っていた。けど、ナランチャとミスタの消失で確信した。敵は既に、この船内に潜んでいたんだ。

「ちょっとミスタッ!あんたまでフザけた事やって隠……」

『違うフーゴ!敵は既に船内にいるの!危ない!!』

フーゴが船室のドアに手をかけるのを防ごうと割り込んだ瞬間、背中に鋭い痛みが走る。

『うっ、!』

どうやら短い刃物で刺されたらしい。後部に焼けるような痛みを感じながら、段々と意識が遠のいていく。ああ、結局フーゴ、守れなかった。

「…フーゴ?…レイ?」

薄れていく意識の中で、ブチャラティの声が微かに耳を掠めた。




……………………………………


「…………い、……て…く
…さい」

あれ、私何して……

「しっかりしてください、レイ。」

『ん…あれ、ジョルノ…?』

確か私は、フーゴ共々やられて、それで…

『っ、追っ手は、どうなったの?』

「そこに」

ジョルノが指さす方を見ると、首にジッパーのついた胴体が身内三人にタコ殴りにされている所だった。

『…そっか。みんな、無事だったんだ。』

安堵のため息が溢れると、次にはじわじわと羞恥心が込み上げてくる。

『ねえジョルノ。私さ、さっきブチャラティにけっこう役に立つと思いますとか言っちゃったんだけど。』

「それはまた大きく出ましたね。」

『はは…スタンドは出なかったのにね。』

いや本当に合わせる顔がないというか、普通に恥ずかしすぎる。まあ彼のことだしそんなことは気にしてないだろうけど。

『ところでその転がってるの、身元はわかったの?』

「ええ、ここに身分証が。マリオ・ズッケェロ、住所はローマ。ローマのチンピラさんか…」

『へえ、それはまた遠路遥々とご苦労様だね。』

そこまでして追って来るくらいだ、きっと仲間も向かっているはず…いや、無線か何かで連絡を取られていたら、先回りされている可能性がある。

『早いとこ口割らせて、仲間の名前とスタンド教えてもらわないと…だけど。ねえ、あそこは何やってんの。』

気づけばナランチャとミスタ、そしてフーゴまでもが気色の悪い動きをして…いや、踊ってるのか。

「ああ、あれは……まあそう気にしないで。」

『適当に流さないでよ』

ジョルノも混ざれば?って言いたかったけど、彼は無駄話が嫌いらしいのでそれ以上はやめておく。

「おい見ろッ!こいつ、船の無線を使っているぞッ!」

『…!?まあ仲間に連絡してない訳ないか。』

アバッキオが何でかはわからないけど、手がかりを見つけたらしい。みんなの後を追ってアバッキオの方へ行くと、私目がけて見覚えの無い生首が飛んでくる。

「ジョルノとレイ!おめーらにもおれのスタンドは見せるつもりはねえ、後ろ向いてな!」

『…はーい』

スタンド、ね。彼の能力は過去に起こったことを見る事ができる…とかなのかな。いや、変な勘繰りはよそう。アバッキオにイチャモンつけられそうだ。

『ジョルノ大変だね、アバッキオに目つけられてる。』

「お互い様でしょう。」

『いや違うね。私はナランチャもだよ。』

「ふっ、それは大変だ。」

くだらなすぎるし内容も全くないけど、ジョルノとはなんか上手くやっていけそうな気がする。はじかれ者同士、こうやって笑い合うのも案外悪くないかもね。


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