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『うわあナポリ湾って綺麗なんだ。』

「まあイタリア観光名所の一つだからな。」

『へえ…よくヨットタダで貸してくれたね。』

「そりゃあ、ブチャラティの日頃の行いのおかげってやつだぜ!」

雑誌をパラパラめくりながらも会話に付き合ってくれているのはミスタ。なんだかんだ言って一番よく話してくれている。

『ねえ、ミスタはこの船どこに向かってるか知らないの?』

「それは俺も気になってるところだぜ。ブチャラティが言わねえってのは、何か考えがあってのことなんだろうがよ…」

『ふーん…』

先程のプチ戦闘の後、仲間を紹介すると連れて来られたのは小さな港だった。そこでブチャラティに促されるまま船に乗り込んだのはいいものの、それから何も知らされぬままもう早1時間くらい経っている。それは私だけじゃないようで、どうやらブチャラティ以外誰も行き先を知らないみたいだ。

『てかさ。なんか私ナランチャに嫌われてるんだけど、なんでか知ってる?』

「ははっ、お前面白えな。そういうの普通聞くかよ。」

『いやさすがに本人に聞く勇気はないよ。』

ちょっとでも目が合うと舌打ちして睨んでくるほどの嫌われようだ。聞けるわけない。
まあ、今は少なからず機嫌は良いみたいだけど。バカみたいな爆音でラジカセを聴きながら、足叩いてリズムに乗ってるし。

『てことでさ、ちょっとナランチャになんで嫌いなのか聞いてみてよ。あとラジカセうるせえよとも。』

「そういう憎たらしいところが原因なんじゃあねーの?まあ、後半については同意だがな!」

そう言うとミスタは手際よく缶ジュースを手に入れディスク挿入口に流し込む。

『うわー可哀想。』

「まさかだろ。お前も一口飲むか?」

『いや大丈夫。』

お前にはくれてねー!ってラジカセへの怒りがこっちに向いたら困るしね。

「まあしかしだ。レイの疑問も最もだぜ。」

『なんで嫌われてるのかってこと?』

「そっちじゃねーよ。目的地だよこの船の。」

『それこそ聞いてみればいいじゃん。』

さっきからそうやって後押ししてほしいって顔に書いてあるっての。ミスタは眉をひそめて少し考えた素振りをみせると、もう我慢の限界だとでも言わんばかりに声を張り上げた。

「おいブチャラティ!いいかげんよーっ、この船がどこ向かってるのか教えてくんねーかよーッ!」

暗黙の了解とされる一方で、しかしこの問いは全員にとっての疑問であったはずだ。その証拠に誰もミスタを咎めず、それどころかブチャラティの答えを待っているのだから。

「…いいだろう。陸も遠くなったしな。」

ブチャラティの言葉に全員が息を潜める。

「ポルポが自殺した!だからヤツの遺産をこれから回収に行く!」


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