嫌いと言った俺に対して土方はいたって冷静だった。
普段なら嫌いと言えば喧嘩勃発。
つかみかかる勢いでわーぎゃー言い合うのに、その時の土方は「そうか」と言ったきり何も言わない。
少し俯き、黙り込む土方。
暫くそれを見つめていると、土方は不意に顔を上げた。


「銀時、」

「あ?」

「それは、本心か?」


真っ直ぐ俺を見つめる瞳が、何を考えているかは分からない。


「あぁ、俺はお前が大嫌いだ」


大嫌いで、大好き。
間違ったことは言っちゃいない。
そんな俺の返答に、土方は怒るでもなく笑った。


「そうか」


と言いながら満足そうに微笑む土方。
何で怒んねぇの、とは口にできなかった。
すると土方は


「お前な、それ、嫌いなやつに向ける顔じゃねぇよ」


って俺の頭をクシャっと撫でる。


「銀時、好きだ」


尚もそう言い募る土方を俺は勢いよく突き飛ばした。
「いってぇな」なんてちっとも痛くなさそうな顔で笑う土方が、怖い。


「俺に触るな!!」


声を張り上げて言う。
今まで堪えていたものが全部流れ出すように感じた。


「何なんだよてめえは!!いつもいつも自分勝手!いつの時代も俺はお前に振り回されて!!てめえはいいよな?思う通りに動けばいいんだからよ。俺のことなんか気にしなきゃいいんだからよ!!」


癇癪を起こした子供のようなそれは、何も覚えていない土方には意味の分からないものだと思う。
だけど、言わずにはいられなかった。


「何で覚えてねぇんだよ・・・!」


来世へ繋ぐほどの前世の土方への想いは、どこにやればいい?
前世の土方の俺への想いが来世へ繋ぐほどじゃなかったと知らしめられた俺の傷はどこで治せばいい?
ほんの少し期待してたんだ。
本当は仕方なく俺に別れを告げたのだと。
別れざるを得ない事情があったのだと。
あの時、まだ俺たちは強く想い合っていたのだと。
なのに、なのに・・・!


「なんで・・・・っ」


涙さえ出そうだ。
惨めすぎる自分に嫌気がさす。
来世では、なんて願わなきゃよかった。


「土方に声なんてかけなきゃよかった・・・!」


そう言い放った次の瞬間、土方は俺をキツく抱き締めた。











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