※からくりピエロの続編です


「銀時、好きだ」


そう言ったお前は、何もかも忘れていた









よわむしピエロ









土方と俺は、前世では恋人だった。
そう言ったらはたしてどれくらいの人が信じるだろうか。
答えなんて分かりきっているけど、そんなことを思わずにはいられなかった。


『別れるっつってんだろ。飽きたんだよ、お前に』

『言動が面白かったからな。側に置いてやったけど。もう飽きた。だから別れる』

『最初から好きだなんて思ってなかった。まさかとは思うが信じてたのか?』


蘇る前世の記憶。
何がいけなかった、なんて考えるのはもう止めた。
考えるだけ、無駄だったんだ。


「銀時、帰ろうぜ」

「おー」


土方のこぐ自転車の後ろに跨がりながら考えるのは、今の土方のことだった。
今の土方とは高校に入学したときに再会した。
同じクラスになって、土方と話すチャンスもあったが、気まずさから出来なかった。
だけど、どうしても土方の声が聞きたくて、話しかけたんだ。
よう。土方、久しぶりってね。
そんな土方から返ってきた言葉は、「・・・初めましてじゃね?」で。
・・・土方は何ひとつ覚えてなかった。
それを知った瞬間、何とも言えない気分になったのを覚えてる。


「なあ、土方」

「なんだよ」

「もし、俺がお前の目の前で自殺したらどうする?」

「は?お前はそんなことするやつじゃねぇよ」


したんだよ、土方。
俺、お前の目の前で自殺したんだよ。

思い出せよ。
いや、やっぱ思い出すな。
二つの思いが対立して、俺の心が悲鳴を上げる。


「銀時、好きだ」


何もかも忘れている土方は、何もかも覚えている俺に愛を語った。

「知ってる」

「お前はどう思ってんだよ」

「好きだよ。課題見せてくれるからな」

「そうそう意味じゃなくて・・・!」


土方が顔を歪める。
そんな顔は見たくなかった、なんて・・・俺がはぐらかしたせいなのに思ったりして。
『来世では愛し合えるといいな。』
そう思っていた筈の俺は、生まれ変わって臆病になった。

土方が好きだと言ってくれている。
前世から望んでいたことが叶った。
なのに、俺は素直に喜べないでいる。
もしお前を受け入れて、再び別れを告げられたら、

俺はもう・・・。


「分かってるよ」

「は?」

「好きの意味」

「っ、じゃあ・・・!」

「でも、ダメ」

「なんでだよ」

「お前が何もかも忘れてるから」


もし、もし土方が前世のことを思い出して、それでも俺を好きでいてくれたら。
その時は、ちゃんと応えるから。


「土方、俺はお前が







嫌いだよ」











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