もがいて、苦しんで  



薄暗い部屋、飛び散らかる衣服。
部屋の隅には二つの影。
一つになろうと必死にもがく。


「ひじ、かた・・・っ」

「銀時、」


しかし、彼らは知っていた。
どんなにもがこうとも、一つになれないことを。
こんなにも求めあって、ぐちゃぐちゃに溶けてしまいたいとさえ思っても、二つは二つなままだと。

寂しさから、優しくしようとする意識は飛んでいき、激しくなる。
寂しさから、包み込もうとしていたそれは不器用に心を切り刻む。
寂しさから、すがり付こうとする男の手は耐えきれず爪をたてる。

無駄だと知っていて、なお男たちはもがいた。
家族連れを見てあれが正解なのだと言い聞かせたところで、己の中で釈然としないなにかが生まれてくるのだ。
そうして、八方塞がりになっていく。
当たり前のことすら、見えなくなっていた。


「何がアンタらをそうさせるんで?」


少年は問う。
口を挟んでしまうほどに、二人は痛々しい。


「どうして、別々なままじゃダメアルか?」


少女は問う。
体が別でも、心は繋がってるじゃないかと泣いた。

ああ、なんてことだろうか。
そんなことすらも、忘れていたよ。
男たちは少年と少女に笑いかける。
おかげで目が覚めた、と。

薄暗い部屋、飛び散らかる衣服。
部屋の隅には二つの影。
心を求め、激しく重なった。

彼らの瞳には、確かな光が宿っている。
今度こそ、優しく、包み込み、すがり付く。
乱暴で激しかった行為は、激しさは変わらねども、優しさを含むようになった。
彼らは気づいてるだろうか。
彼らの歩く真っ暗だった道が、疑うほど明るい光に包まれていることを。

今日も、部屋からは艶やかな声が漏れていく。




End



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