36…あのねえ副方さん
「…あのねえ副方さん」 「………」
突っ込み放棄ですか。
「冷静に、一番リスクの少ない手段を選ぶべきでしょう。私も銃さえあれば時間稼ぎくらいできます。その間に助けてくれればいいだけの話です」 「…解ってる」 「それにもし私が消えたとして…、それで祐季さんが戻って来て、私も元の世界に帰れるなら、あれ、それが一番なんじゃないですか?ねえ沖田さん」 「……」
ずっと黙っていた沖田さんに話を振ると、ちろりとこっちを見られた。 それから何か言いたげにし、「…さァねェ」とはぐらかされてしまった。
「まぁ、それはともかくとして」
近藤さんが固い表情で話を纏める。
「囮は祐季ちゃん。作戦内容は前回と殆ど一緒だ。決行は明日。山崎が約束を取り付けてくれてある。場所は――」
「あれ沖田さん」
話し合いが終わり、そのまま食堂に言って朝食を取り、部屋に戻ると、沖田さんが柱に寄り掛かって私を待っていた。 持ってきた水のコップを差し出すと、
「オメェが持つと普通の水道水も餌水みてーに見えるなんざ、オンリーワンの才能でさァ。大切にしなせェ」 「そんなステータスは今すぐ捨て去りたいんですが」
などと話しながらも素直にあおった。
「それで、どうしたんです?」
私の部屋に招き入れながら、話を促す。 すると沖田さんはさり気なく視線を逸らし、
「祐季」 「はい?」 「オメェは元の世界に戻りてーんです?」 「……え」
なんていう、答えにくい質問をした。
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