37元の世界…
「元の世界…」
尋ねられ、私は言葉に詰まった。
「…不思議に思ってたんです」 「?」 「皆さん一度も私に帰れって言わなかったじゃないですか。普通、酷くても優しくても、言うと思いますよ」 「…タイミングの問題でェ」
短く言う沖田さん。 それ以上は何も言わなかったので、質問に答えるために少し考える。 今の状況だ。 「帰りたく無い」なんて言うのは、あまりよくないかもしれない。
「んー。特に向こうの世界に未練は無いですけど。でも、帰るべきかもしれませんね」
無難に答え、ふふと笑ってみせる。 しかし沖田さんは不満げだった。
「オメーの気持ちを聞いてんでィ」 「私の気持ちですか?」 「あァ」 「んー…。ちょっとあんま考えたことないです。でも、こっちの世界には未練はまだあるので、それが終わるまでは」 「…そうですかィ。じゃあ考えときなさんなァ、また聞きやす」 「宿題ですか」 「オメェは小学生か」
沖田さんは呆れたように言い、ごろんと寝転がった。
正直言って。 これはまたとないチャンスだった。 だって多分、私が行けば、私は本当の元の世界に帰って、それと同時に祐季さんが戻ってくることになる。 これはもう90%くらいそうだと思う。
きっと土方さんだって皆だって、解ってるはずだ。 逆に言えば私が帰らないと祐季さんは一生帰って来ないってことでもあるかもしれないんだから。
だから私は、帰る気でいた。 祐季さんを皆の元に戻してあげないと。皆が祐季さんのことを大切に大切に思っているのは、私への態度で痛感してきたから。
いやいや、そりゃあ本当はね? ずっとこの世界にいたいよ。 ずっとこの屯所で、沖田さんを、皆を守っていたい。 だけどそうもいかないから。 別の方法で、一度しか叶わない方法で、守らなきゃね。 やっだなー、私今超ヒロイン。超かっこいくね?
だから、私は。
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