14やっまざっきさぁーん!
土方さんの計らいで、私はその道専門の人に一週間ミッチリ指導を受けることになった。 何のって勿論、銃ですよ。拳銃。 私も一応真選組に身を置いているわけだし。テメーの身くらいテメーで守れ、ってね。
「やっまざっきさぁーん!」 「なに祐季ちゃん、朝から」 「指導行く前に軽く撃ちたいんで、的役やってくれません?」 「何それ新手の恐喝?」
あれから何だかんだ山崎さんとは仲良くなった。マブダチ・イエー!
「御免祐季ちゃん、俺祐季ちゃんのことマブダチって思ったこと一回もない」 「ザキヤマ調子乗ってっとど頭ぶち抜くぞ」 「祐季ちゃァァァん!?いつもの姿が世界の果てまで飛んでってるよ!?」 「やだなーもー何言ってるんですかぁ山崎さん」 「俺たまに祐季ちゃんが怖いよ」
沖田さんとも一応、話せるようにはなった。 あの一件以来、態度には出さずとも怪我の具合を気にしている様子が伝わってくる。ドSな癖して優しいんだからもう。祐季さん正直どう接していいかワカラナイヨ。 ちなみに今は右腕は吊っていない。当日は吊りっぱで利き腕だからご飯に困ったのだけれど、
―「じゃーんけーんぽいっ!」
真選組内で大々的にじゃんけん大会が開催されて見事勝ち残った土方さんに(半分嫌々だったけど)食べさせてもらった。 そのときに入れ替わったことも簡単に説明したのだけれど、
―「うおー、マジかー」 ―「へー、そうなんだー」 ―「祐季ちゃんいなくなってどうしようかと思ってたけどそっかー」
真選組の方達の頭が想像以上に緩くて、土方さんが「テメェらどういうことか解ってねェだろォォォォ!!」ってキレて有耶無耶に終わった。 まぁだから、私の居場所もいつの間にか出来ていて。それが凄く嬉しい。 それと同時に、近藤さんに頼み込んで、私たちが入れ替わったときの天人達の情報収集に、私も参加させてもらうことになった。 一応そこんとこ、けじめとしてね。
ああ、それからもう一つ。
「おい祐季。今日は早く帰って来なせェ」 「沖田さん。今日は、と言っても昨日もあれで直帰なんですが」 「オメーの仕事が溜まってるんでィ」 「ええ?土方さんが暫く回さないって昨日」 「何言ってんでィ。俺の仕事はお前のもの、お前の仕事もお前のモンだろ」 「何ですその似非ジャイアンは!ていうかそれってつまり沖田さんの仕事じゃないですかァァ!私に回さないでくださいよ!」 「判子押すだけの簡単な仕事ですぜ。いいからやれや」 「ええええそれってどうなんです!?」 「土方さんにバレなきゃ問題ねーさァ。上司命令な」 「職権乱用だ!!」
二番隊長から一番隊副隊長になりました。 さすがに隊員引っ張っていけないからね。でも正直地位は上がったのか下がったのかよくわからない。 だってそれでも結構トップの方の役職で、
―「土方さん私こんなとこ就いてていいんですかね」 ―「だからとっつぁんにいいとこ紹介してもらったんだろーが。いいか、一番隊副隊長の座に相応しい技術持ってこいよ。ぜってぇな」
…と土方さんに念を押されている。
「雌豚ァ」 「雌豚やめてくださいさっき名前で呼んでたじゃないですか何ですか」 「修行の方はどうなんでィ。相当しごかれるってェ噂だが」 「そうでもないですよ。私でついていけてる位です、結構優しく指導してもらってます」 「やだねェ最近のトコは女と見りゃ口説きまわって」 「そういう意味の『優しく』じゃねぇよ」 「はい祐季残業けってーい!上司の心を傷つけた〜」 「聞いたことある台詞ゥゥ!」
いかんいかん、いくらセクハラとはいえ上司にタメを利いてしまった。 っていうか今のがなくても残業は決定してただろォォ!(泣) …とはいいつつ、実は仕事は好きだったり。 なんてーの、こういう地味な仕事大好き。ひねもすトイレットペーパーの管理とかしてたい。 まぁ、銃の修行も好きなんだけれど。
「ああっ、こんなことしてる場合じゃない、時間が!」 「電車一本乗り遅れろ」 「小声で不吉なこと言わないでください!行って来ますね沖田さん!」 「祐季ちゃん実は俺もいるよいってらっしゃい」 「あああ山崎さん影薄すぎて気づかなかったばいば〜い!」
ドタバタと屯所を出て、駅へと走る。 くそう、早く必殺技を習得して沖田さんを弄れるくらいになってやるう!
「副長、これ監察の結果です。ここ置いときますね」 「ああ、ありがとな」 「あ、そういえば祐季ちゃん昨日から銃の指導受けにいってるんですっけ」 「ん?あー、まァな。山崎も行くか?」 「いやいや…。なんか凄い厳しいところだって噂ですけど、実際どうなんです?」 「さァな。でもとっつぁんの話だとそう簡単にこなせる内容じゃねェらしいが」 「あれ、ってことは松平警部は知ってるんですね」 「知ってるっつうか、昔通ってたらしい。1日でやめたらしいけどな」 「え!?―ええ!?警部が根を上げるようなとこなんですか!?祐季ちゃんよくあんな元気に行くなぁ…」 「そうか?ああいう奴じゃねェか」 「違いますよ、副長。それは昔の祐季ちゃんでしょ。今は一般人の祐季ちゃんですよ?」 「あっ、そっか。……マジでか!?」 「今更驚いてるんですか副長」 「…あいつ、凄ぇな…」 「ね」
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