08あんま気に病むなよ


沖田さんは振り返ることなく障子を開け、部屋から出て行った。
それを見た土方さんがため息をつく。

「あんま気に病むなよ。アイツ結構お前に懐いてたんだ」
「……」

そういわれると、逆に思い悩んでしまう。
そうだよね、私…ある意味一番嫌な感じに真選組の『祐季さん』を奪ってしまったんだ。
浮かれてるのは私だけ。浮かれてなんか、いけないんだ。

色々考えると柄にもなく涙目になってしまった。
やば、い…。本格的に泣きそう。沖田さん超怖い…。どうしよう、私、私……。

「落ち着け」

ぽん。

と、頭に柔らかく何かが触れた。

「言ったろうが。お前が気に病むことじゃねェ」

それからゆっくり――引き寄せられる。
暖かい体温がぴったりと私を覆う。
ほのかに香る、煙草の匂い。

「……っえ…っ!?」

私、土方さんに抱きしめられてる!?

あまりの衝撃に涙が引っ込んだ。ていうかあの、背中に手回され、え、なにこの状況、なんで、土方さ、え、ええええ!?

「ひひひひひひひひひひじかたさん!?」
「あ?何だよ」
「ななな何だよはこっちの台詞で、あの、何でこんなことに!?ていうか他の隊士さんが、見て、」
「他の隊士っつっても山崎しかいねェだろ。つうか俺にとっちゃあお前を慰めることなんざ赤ん坊あやすみてェなモンだ」
「なっ―――」

こんな感じだったの二番隊長さん!?これが普通だと!?
驚く反面、それほどに心を許した人だったと気づき、また気分が沈む。

「あー…。だから落ち込むなって。ほら、顔上げろ」
「えっ」

えっ、も、もももしかしてそれってひょっとしてひょっとするの!?
えええ!?ミツバさんは!?ってか私は今は私であってそんなそんな恐れ多いことうわアアアア!!

「むぐっ!?」

何だかんだ言ってしっかり上げた顔を、土方さんに思い切り引っ張られた。

「いだだだだだ!」
「おーう、そうだ、そんな感じで笑っとけ」
「これのどこが笑顔に見えるんでいだだだだ!!」



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