「あ、坊おかえりー」

部屋に入ると、出雲としえみの間にちゃっかりと陣取って朗らかに話しかける志磨が目に入った。

「奥村くんもほら、はよ座り...!?」

勝呂は鬼の様な形相で志磨の前まで行くと志磨の首根っこをぐいと掴んだ。

「お前はここや!」

「んで奥村、志磨の横な」と燐に着席を求めてから、燐の正面に出雲、その隣に、しえみとテキパキと席を振り分ける。
志磨の正面に胡座をかいて座るとみっちり教えたるわ と志磨に向かって不気味に笑い掛けた。
勝呂の横で子猫丸が堪忍してやと頷く。

「あれ...これ、僕、奥村くんとおんなじ立場やと思うんは気のせいですよね?」

「気のせいやあらへん。お前も勉強するんや!」

声にならない声をあげて志磨はしおしおとその場に倒れこみ、こんなはずではなかったと涙を浮かべる。
教える側から教えられる側へと変わったことを理解した志磨は恨めしそうな顔で燐を見る。

「ええなぁ、奥村くん。出雲ちゃんと杜山さんに囲まれて〜。どうせやったら、僕そっちの方が...」

と、言いかけて、正面の勝呂の顔を見た途端言葉を詰まらせた。

「あ?なんか言うたか!」

勝呂の怒りメーターが目一杯になっているのを感じて志磨は素直に謝った。

「怒られてやんのー!なはは」

雪男が俺のオカーサンなら、
勝呂は志磨のトーサンだな、と燐は思った。

「あんた、人のこと笑ってられる場合?」

「...場合...じゃない...デス」

出雲の冷ややかな視線に気付いて萎縮する燐

あかん、頭痛がしてきた と頭を抱える勝呂であった。




開始二時間が過ぎた頃、教えられる側はもちろんのことだが、教える側も疲労の色が見えてきた。

ぐきゅるるる...

しんと静まり返った部屋の中でそれは鳴り響いた。

その音の出処はメンバーの中で一番の食いしん坊 (燐)のものかと思われたがどうやら違う。

志磨が出雲の方を向くと出雲は全力でそれを否定した。

出雲の横で顔を真っ赤にしたしえみがもじもじと何か呟いている。

「わ、わたしなの...ごめんなさい...」

見兼ねた勝呂が、ここらで一息入れるか!と言うと、燐が飛び跳ねるように扉へと走り出す。

「飯にしようぜ!飯っ!ちょっと待っててくれよ!」

とだけ言い残すと、燐は一目散に部屋を出て行ってしまった。

「アイツどこにあんな力残しとったんや...」

ヘナヘナになって机に突っ伏する志磨を見て勝呂は呟いた。




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