02

「………っ」
普段より少し多めの患者も大方診終わり、軽く息をついている燭の視界に名前が映る
といっても、名前は外のベンチに座っている
研案塔の3階から見下ろしているのだから、距離があるのだが
休憩中なのか、音楽プレイヤーを付けていた
時折、気持ち良さそうな風が名前を通り抜ける
ふと足を止めた燭を隣で歩いていた看護師が不思議そうに見上げる
「………燭先生?」
無意識のうちに名前に見入っていたようだ
遠慮気味に看護師が燭に問う
「そろそろ、次の仕事がありますけど…」
いけない
「……少し」
仕事中なのに
「休憩してくる」
………お前に会いたい



そう思いだすと止まらない
慌てて引きとめようと看護師が何か後ろで言っているが構わない
燭は白衣を翻し、風のよく通るベンチへと足を進めた
「(……名前)」


今思えば、この数日間ろくに会話を交わしていない
最後に交わした言葉はどうでも良い事務的な用事だった
燭にとってはそんな会話も大切な思い出なのだが
しし、彼氏と彼女という関係である以上、二人で過ごしたいという願いは燭にもあるわけで
「(今度、散歩にでも誘うか……)」
本当は街にでも繰り出して、休日らしいことをしてみたいが仕事が有無を言わせない
よって、デート範囲は研案塔内に限られてしまう
それでも良い
二人の時間が欲しい
この隙間を埋められるような
そこまで考えて、自嘲気味に首を振る
柄でもない
いつから私はここまで名前のことを
そう思いながらも、足は着実に名前の方へ向いてい
気がつけば、もう視界に入っている
「………名前?」
問いかけるが、答えが無い
よく見えるように、前に回り込む
「寝ているのか……」
見ると、気持ち良さそうに寝息を立てている名前の姿が
髪が程よく名前の顔を隠し、小さく開いた口からはリズムよく吐息が流れている
燭は軽くため息をつき、自分が羽織っていた白衣を名前にかけた
替えの白衣ならいくらでもあるから心配する必要はない
……結局、会話はできないままか
そう思いながら、燭は次の仕事現場へと向かった



To be continued………


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